【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。米大リーグ機構(MLB)と選手会が、新労使協定で合意に達したそうです。ぜいたく税の課税基準額やメジャーの最低年俸をめぐってなかなか折り合いがつきませんでしたが、何とか妥結したことで僕もホッとしました。そこで、本日は米大リーグを新しい観点で楽しめる映画をご紹介したいと思います。

 ブラッド・ピット主演の「マネーボール」(2011年)です。マイケル・ルイスのノンフィクション「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」を映画化したもので、予算をかけずに利益を最大化する、いわゆる“マネーボール理論”が物語になっています。実話を基にしているので、説得力があるんですよ。

 弱小球団というのは、選手を育てても、育てても、金持ち球団に持っていかれてしまうじゃないですか。そうなると、いつまでたっても勝つことはできません。そこで、ブラピ演じるアスレチックスのGMビリー・ビーンは発想を変えます。オールラウンダーのスター選手を育てるのではなく、無名選手でも、その長所を生かし、適材適所で使っていこうと。例えば、バントが欲しい場面ではバントに秀でた選手を使い、塁を進めたい場合は俊足の選手を代走にしたり…。これなら若くて粗削りだったり、旬を過ぎた選手でも安く使えるというわけです。具体的には3つの軸があります。

 ①「攻めるな」。いたずらにホームランを狙わず、コツコツとヒットで稼いでいく。

 ②「振るな」。フォアボールでもいいので塁に出るべし。

 ③「リスクを冒すな」。アウトの危険がある場合は勝負をしない。

 この割り切った理論でアスレチックスはまさかの20連勝をしてしまいます。もちろん、最初からスムーズにいったわけではありません。球団のおじいさん上層部にこの理論をプレゼンすると、当初は総スカンを食らったそうです。それでも「スター選手を買うお金はないじゃないですか!」と一歩も譲らず、実際に結果を出してしまいます。

 でも、これは野球だけではなくビジネスにも応用できますよね。仕事ができる人材というのは高額ギャラじゃないと、なかなか来てはくれません。だとしたら、今いる人の長所を生かして適材適所で使っていく。この映画は、予算が少なくてもアイデア次第で勝つことができるということを教えてくれる一本と言えます。

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。