東京五輪柔道男子66キロ級金メダルの阿部一二三(24=パーク24)が、強力ライバルの存在を進化の力に変えている。

 全日本選抜体重別選手権(3日、福岡国際センター)同級決勝で、約1年4か月前に東京五輪代表の座をかけ激戦を繰り広げた丸山城志郎(28=ミキハウス)を指導3の反則勝ちで再び退けた。阿部は「やっぱり気持ちが入った。五輪王者として絶対に負けられなかった。前に出て、何が何でも勝ち切るんだという気持ちで戦った」とプライドをにじませた。

 アスリートは大きな目標を達成するとなかなか気持ちの〝スイッチ〟を入れるのが難しいとされるが、阿部は「五輪が終わって、まだ進化できると感じた。気持ちをつくる難しさは感じていない」と涼しい顔。今後へは「(東京五輪後の)初戦でいいスタートが切れた。全勝でパリ五輪代表を決めて、パリで2連覇できるように頑張りたい」と力を込めた。

 バルセロナ五輪男子78キロ級金メダルで所属の吉田秀彦総監督は阿部の現状をこう分析する。「やっぱり五輪で(金メダルを)取ると気持ちが抜けてしまうし、僕もそうだった。でも一二三の場合は丸山がいる。ライバルがいると自分を追い込めるところがあるから、そういう面では大丈夫じゃないですか」

 阿部は丸山とともに世界選手権(10月、タシケント)代表に決定。パリ五輪へ向けても切磋琢磨する関係が続きそうだ。