【ニュースシネマパラダイス特別編】どうも! 有村昆です。先月27日(日本時間28日)に米アカデミー賞授賞式が行われましたね。本来、この連載は“ニュースを映画作品で斬る”のがコンセプトですが、米映画界の流れに大きな変化が生じているので、本日は「特別編」として3つのポイントを押さえたいと思います。

 まず「ネット勢が今後、映画界をリードする決定打になった」ことが挙げられます。今回、作品賞にノミネートされた10作品のうち、下馬評が高かったのは「コーダ あいのうた」と「パワー・オブ・ザ・ドッグ」です。結果的に「コーダ」に軍配が上がりましたが、「パワー」は主要賞である監督賞を受賞しました。

 これが何を意味するかって? 実は「コーダ」を配給したのはアップルなんですよ。そして「パワー」を配給したのはネットフリックス。つまり、作品賞は“アップルVSネットフリックスの頂上決戦”でもあったんです。そして、これまで映画界をリードしてきたワーナーやユニバーサル、ディズニーがこの2つの賞を逃した意味は大きい。劇場公開とともに、映画配信の時代の決定打になったと思いますね。

 もうひとつのキーワードは「多様性」。「コーダ」は聴覚障害の両親を持つ10代の少女(コーダ)を描いていますし、助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァーは、ろう者。主演男優賞のウィル・スミスは黒人です。そう、肌の色や障がい者などマイノリティーでも、オスカーに輝けることを象徴していたと言えるんですよ。

 最後は「娯楽作品が入りにくくなった」。昨年、大ヒットした映画といえば「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でした。それが無冠に終わったのは僕もショックでしたね。最も映画界を潤したのに…。以前だったら、「ベン・ハー」や「タイタニック」など、大ヒット作品が多部門を制したり、「ジュラシック・パーク」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でさえも視覚効果賞とか音響編集賞などを受賞していました。

 でも、今は単館系のアート寄りな作品が目立ってばかり。それもいいんですが、見た人が少ないので、授賞式の視聴率が落ちているんです。そりゃそうですよ。喜びを共有できないですもん。「ハリウッド映画最高!」みたいなポップコーンムービーにも、もっとスポットライトを当ててほしいな、と僕は思います。