【魔改造の手腕・特別編】今季の楽天・田中将大投手(33)は、ここまで2試合に先発登板し、2勝0敗。その2試合とも7回を投げ、防御率も1・93と順調なスタートを切った。

 だが、そんな田中将に“気になる点”があるというのは、本紙で「魔改造の手腕」を連載した久保康生氏(元近鉄、阪神、ソフトバンク投手コーチ)だ。具体的には右手首の使い方だという。

「手を後ろで丸めて送り出す動作。この動きによって、ボールを上から叩けていない。無理にボールを回転させようと粘って、前でボールを離そうとして、リリースポイントが低くなってしまっている」

 その影響で「ボールを下からなでて押し出すような動作となり、投球軌道が地面と平行に近くなり角度が出ない。その結果、武器であるスプリットも低いところから低いところに落ちる形になるため、効力を発揮させ切れていない」という。

 田中将は元来、力投型。そこから結果を積み上げ海を渡った。NPB時代からメジャー時代にかけ11シーズン連続2桁勝利は見事な数字だ。その間、徐々に投球スタイルは洗練されていった。だが、さらなるモデルチェンジが必要な時期に来ているのかもしれない。

 久保氏は「過程を近くで見てきたわけではないが」と前置きしつつ、完全復活へのきっかけとなりそうな、過去に自身が手がけた事例を挙げた。

 それは阪神コーチ時代に指導した、福原忍(現阪神投手コーチ)、安藤優也(現阪神二軍投手コーチ)のキャリア終盤でのモデルチェンジだ。

「あの2人は経験を積んである意味、楽に投げる技術を身につけていた。粘りや間を大切にして投げるフォームが完成していたが、それをあえて簡素化して、強く荒々しく投げようと提案した」と振り返る。

 昨季の田中将は来日も遅く、3月には右ふくらはぎを痛めるなど万全ではなく、4勝9敗と物足りない成績に終わった。それは久保氏も織り込み済みだが「何かを変えなきゃ。洗練された投手に打者は怖さを感じてはくれません」とした。

 田中将の実力なら今後のメジャー復帰も現実的。久保氏は野球人の先輩として「圧倒的な15勝5敗くらいの数字で、日本じゃ抜けているところを見せないと。200勝(あと19勝)して(もう一度アメリカへ)行くぐらいであってほしい」と“そこそこ”の内容ではなく、剛腕の完全復活に期待を寄せていた。