オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第85回は「リモコン隠し」だ。

 こいつは現在の生活に欠かせないリモコンをいたずらで隠してしまう妖怪である。クーラー、テレビなどなど、リモコンがどんどん増える一方、必要なリモコンを使う時に限って、そのリモコンが見当たらなくなる。現代人は便利な生活を享受していると同時に、リモコンの精神的奴隷になっていると言えよう。

 いくら必死になって探しても見当たらない。それは妖怪「リモコン隠し」の仕業である。

 うせ物を発生させて人間を困らす妖怪は「ちろり」という長崎県に伝わる魔性の存在がいる。このリモコン隠しも、ちろりが現代風な姿になったものであろうか。ちなみにちろりとは、日本酒を温める小さな入れ物である。

 リモコン隠しの姿形は不明であり、リモコンを隠す目的も分からない。どちらかというと、アニメやネットの影響で生まれた“ネタ”妖怪だと推測されるのだ。

【山口敏太郎】作家、ライター。著書「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」など200冊あまり。テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。ユーチューブでオカルト番組「アトラスラジオ」放送中。