昨年暮れに行われた「M―1グランプリ2021」で「錦鯉」が優勝し、大ブレークしたことで、夢を諦められない高齢の芸人が増えているという。

 錦鯉は50歳の長谷川雅紀と44歳の渡辺隆のコンビ。結成したのは2012年で、コンビ歴は10年ほどだが、芸人としてのキャリアは2人とももっと長い。

 北海道出身の長谷川は、吉本興業が札幌事務所を立ち上げた1994年にオーディションを受けて合格。その時の同期に「タカアンドトシ」がいる。一方の渡辺が吉本の養成所であるNSC東京校に入ったのは99年。同期は「平成ノブシコブシ」や「ピース」の綾部祐二らだ。

「キャリアは長いけど、彼らは長い間、本当に売れなかった。錦鯉を組んだ後も仕事はライブくらいで、アルバイトをしないと食べていけない。実際にお笑いだけで生活できるようになったのは、20年のM―1で決勝進出してからでしょうね。翌21年に優勝して今は大ブレークしているが、長谷川なんてもう50歳ですからね」(お笑い関係者)

 40代以上の男性コンビが全く売れていなかったら、とっくに夢を諦めていてもおかしくないが、この2人は諦めず、見事にM―1優勝を果たした。

「これを見た40代、50代の売れていない芸人たちが『自分たちも頑張れば、まだまだいける!』と思うようになってしまった。東京の地下ライブでは、50代以上の芸人がゴロゴロしている。中には60歳を超えてやっている芸人もいる」(同)

 01年に始まったM―1は当初、参加資格が「結成10年」だった。これは創設者の1人である島田紳助さんの「10年もやって準決勝にも残れない芸人はやめた方がいい」という考えから。要は「売れない芸人を諦めさせ、早めに別の生き方をスタートさせる」という方針で始まったのだ。

「ナインティナイン」の岡村隆史は、自身のラジオ番組で「錦鯉とかが取ってしまうと、逆に辞められへん大会になってくるかも」と話していたが、紳助さんの思いとは裏腹に、最近は諦めきれない高齢の芸人が増えてしまっているのが現実のようだ。