ベテランが原点回帰で大仕事をやってのけた。巨人が27日のDeNA戦(横浜)に8―2と快勝し連敗を2で止めた。勝負を決めたのは4回に飛び出した中島宏之内野手(39)の5年ぶりとなる1号満塁弾。球団の満塁弾最年長記録も更新した中島には、このオフに原点に立ち返るキッカケがあった。

 4回一死満塁で中島が変化球をしばきあげた。左中間スタンドに突き刺さる、オリックス時代の2017年7月28日楽天戦(ほっともっと)以来となる8本目のグランドスラム。大量援護を受けた先発メルセデスが7回2安打無失点でセ・単独トップの4勝目。9回には4番・岡本和の8号2ランも飛び出した。

 貯金を再び10とし2位・広島に2・5ゲーム差をつけた。背番号5は「前の打席で三振しとったから、それはもうバット絶対に当てて、得点を取るという思いだけ」とニッコリ。原監督は「技術も、パワーも、メンタルも、まだいいものが満ちあふれていますね」と目を見開くと「表のリーダーは(坂本)勇人だろうけど、ナカジはある意味、そのリーダーを支える裏のリーダー的な存在」と阿部慎之助の39歳5か月を抜く、39歳8か月での球団最年長満塁弾記録となった中島に最敬礼だった。

 同学年の亀井が昨年、引退し、ただひとりのチーム最年長となった。プロ22年目シーズンを前にそんな中島に変化が訪れた。近年は単独で自主トレを行ってきたが、チームの後輩・北村が参加を直訴。DeNA・楠本も加わり、香川県内で合同で自主トレを行った。

 中島は「ここ何年間はずっと自分のことをやるという感じで自主トレをしてました。最近はホンマに自分のことだけをやって」と振り返ると「今年は(北村らが)やりたいと言ってくれたので。人とやる分、(練習中に)休憩ができたので良かったと思いますけど」と笑わせた。

 だが久しぶりに若手と汗を流す中で、新たな発見があったという。

「(若手に)『そういうふうにやってみたら』と助言した時に『ああ自分も前は(体のその部分を)使ってたな』と思うことがあって。(年齢とともに)使い方が変わった部分に気づくことがあったというのが、プラスになった」(中島)

 若手に助言することで自身のメカニズムに対し、より理解が深まったという。この日まで生涯打率2割9分4厘、通算208本塁打と打撃技術をとことん突き詰めてきたが、ルーティンを変えたことで思わぬヒントを手に入れた。

 北村は「中島さんは見てないようで見ている」とその視野の広さに驚嘆。中島は「そりゃ一緒にやってりゃ(若手を)見てますね。合間合間、見ながら。彼は一生懸命やっているからそれを見ていて『あそこ、こうなっていたな』と話したり」と淡々と笑った。

 円熟味を増すなかで、さらなる成長を見せたチーム最年長。開幕スタメンこそ中田に譲ったが、このまま好調を維持して定位置を守り続ける。