星組トップ礼真琴が、兵庫・宝塚大劇場で上演中の「めぐり会いは再び next generation」「Gran Cantante!!」で、“10年の成長”を表現している。11、12年に星組で上演された「めぐり会い-」の第3弾。12年に4年目の礼が演じた少年を主人公に、10年後の世界を描く。宝塚は5月30日まで、東京宝塚劇場は6月18日~7月24日。

4年目に演じた同じ役で、その10年後を表現する礼真琴(代表撮影)
4年目に演じた同じ役で、その10年後を表現する礼真琴(代表撮影)

「(前回12年公演で)『もうすぐ15歳です』と言っていた坊やが青年になって、今、何をしているのか-というところから。あれから10年、礼真琴10年とミックスさせながら」

11、12年に柚希礼音主演で上演された「めぐり会い-」シリーズは、恋する男女を描いたコメディー。礼は、12年公演で研4ながら、オルゴン伯爵家の末息子ルーチェを演じていた。

「1作目から役が続いていらっしゃる上級生が多い中で、新キャラクターとして登場したプレッシャーなどが…。本当にできなくて、できなくて、悩んで泣いていた思い出があります」

あこがれの柚希ともからんだ。その柚希、前星組トップの紅ゆずる、真風涼帆(現宙組トップ)らに第3弾上演を報告。柚希らから「すごく楽しみにしているよ」と言われたという。

「あのころ(12年)は(演出の)先生や先輩のアドバイスすら、頭の中でかみ砕けないほど未熟だった。そこから10年、歌や踊りに対しても、自分の掘り下げ方が組み立てられるようになってきたかな、とも。でも、毎回悩み、完成はない。毎日闘っています」

首席で入団した礼は、当初から歌も芝居もダンスにも長じ、2年目に入ってすぐに全国ツアーメンバーにも選ばれている。期待が大きい分、抜てきも早かった。今回、あらためてルーチェ像と自身の共通点を問うと「うーん。『ダンスは得意なんだ』というところですかね」と笑った。

愛情表現が苦手というルーチェが、家族や仲間の温かさで変わっていく様を、組子に支えられつつトップとして率いていく自身と重ね合わせてもいる。

「当時、お手紙だけ(の登場)だったガールフレンド、アンジェリークちゃんが、ついに。まあ、けんかが絶えない恋愛で、不器用なルーチェがまた…(笑い)。でも皆さんの期待は裏切らない、ハッピーでかわいくて楽しい世界観のコメディーになっています」

アンジェリーク役は、トップ娘役の舞空瞳。同期の瀬央ゆりあが、新キャラクターで親友役にふんする。

「(演出の)小柳(奈穂子)先生から『瀬央と2人でワチャワチャして、楽しく絡んでいて』と。一緒に星組で育ってきましたし、普段の私たち、何でも言い合えるような仲間の雰囲気が出せたらと思います」

ショーのタイトルは、スペイン語で「素晴らしい歌い手」という意味。スペインをテーマにした作品だ。

「スペインといえば闘牛士。マントをひるがえして踊らせていただきます。あこがれのひとつでした。かっこいい音楽で、歌うのにワクワクしていますし、宝塚の名作メドレーも」

宝塚公演は、新入団の108期生が初舞台を踏み、ラインダンスを披露する。

「この立場(トップ)になって初めて初舞台生をお迎えする。高揚感は初めての感覚。初々しくて、元気いっぱいでした」

稽古中には宝塚音楽学校110期生の合格発表もあった。合格者にあこがれの先輩を問うと、多くの生徒が礼の名をあげた。「いやいやいやいや! でも、はい。いやー、頑張らねばな! と思うところです」と照れたが、その実力は誰もが認めるところ。

「(自身の)初舞台はロケット(ラインダンス)を4分半。お客さまから手拍子、拍手をいただき、本当に幸せで。今もあの瞬間、覚えていますよ。曲が流れれば踊れると思います」

初心を思い起こしつつ、未来へも思いをはせる。

「今回は第3弾ですが、今から10年後ぐらいに、第4弾…あるかも? って! さらに10年後の世界を、今ここにいる中から誰かがやるんだわって。勝手に(笑い)」。代々星組に継がれる作品へ-。渡されたバトン、礼はしっかりと握っている。【村上久美子】

星組トップ礼真琴は10年の成長を舞台で表現する(代表撮影)
星組トップ礼真琴は10年の成長を舞台で表現する(代表撮影)

<文化庁芸術祭賞 演劇部門新人賞を受賞>

礼は「令和3年度文化庁芸術祭賞 演劇部門 新人賞」を受賞した。主演公演「柳生忍法帖」「モアー・ダンディズム!」が評価された。「名誉、栄誉ある賞をいただき、本当にありがたい」。式典では多様なジャンルの出席者と同席し「すごく勉強になった時間でした」と振り返った。「芸の道において、まだまだ新人。だから、これから伸びしろあるぞって、自分に言い聞かせたい」と気を引き締めた。

◆ミュージカル・エトワール「めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-」(作・演出=小柳奈穂子) 11年に柚希礼音を中心とした星組で上演され、翌12年に続演となり、今回第3弾。前作で礼が演じたルーチェと、ガールフレンドのアンジェリーク(舞空瞳)を中心とした新作ミュージカル。架空の王国を舞台にしたミステリー仕立てのラブコメディー。オルゴン伯爵の次男ルーチェ・ド・オルゴンは、大学卒業後、友人レグルス(瀬央ゆりあ)が立ち上げた弱小探偵事務所の手伝いをして暮らしていた…。

◆レビュー・エスパーニャ「Gran Cantante!!」(作・演出=藤井大介) タイトルは、スペイン語で「素晴らしい歌い手」。スペインの伝統的な祭りをテーマに、スペインにまつわる名曲、ダンスでつづるレビュー。宝塚大劇場公演は、108期初舞台生のお披露目となる。

☆礼真琴(れい・まこと)12月2日、東京都生まれ。09年首席入団。星組配属。当初から歌、ダンス、芝居の実力に比類なく、14年全国ツアー「風と共に去りぬ」でヒロインも。19年10月、11年目で星組トップにスピード就任。今年2月は御園座で「王家に捧ぐ歌」主演。身長170センチ。愛称「まこっつあん」「こと」「こっちゃん」。