〝制御不能〟の身に一体何が起きていたのか――。新日本プロレス1日の福岡PayPayドーム大会で内藤哲也(39)がIWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカ(34)に敗れ、シングル王座戦では泥沼の4連敗となった。思うように結果が残せない内藤は試合後に取材に応じ、昨夏から起きていた異変を明かすとともに〝緊急手術〟に踏み切る決意を告白した。

 団体にとって実に21年ぶりとなった福岡ドーム決戦でオカダのベルトに挑んだが、大激闘の末にレインメーカーで沈められた。これでシングル王座戦は、2021年1月のIWGPヘビー級&インターコンチネンタル2冠王座陥落から4連敗となった。

 またもベルトに届かなかった内藤は敗北後に決断を下した。「やっぱり100%の状態じゃなきゃ勝てないのかな、と。今の状況でも試合はできますけど、勝てなかったということを考えると…。ちょっとでも目を良くするのが勝利につながるのかなと思いました」

 実は昨夏から再び右目の不調に悩まされていたという。19年に目を内下方に引っ張る筋肉(上斜筋)の動きの悪化により複視(物が二重に見える)を起こす「上斜筋麻痺」と診断され、同年11月に手術。この症状の再発により視界が狭まり、距離感もつかみにくい中で試合を続けていた。

「最初は若干、違和感があるくらいでしたけど、試合を重ねるにつれて大きな違和感になっていって。今は19年に手術した時より状態は悪いですね。心のどこかで不安を抱えながら試合をしていたので。そういう部分がこういう結果につながっているのかもしれない」

 このままではトップに戻れないかもしれない。内藤は再手術して再起を図ることを決めた。前回の術後も2週間で復帰しており「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」(15日、名古屋で開幕)に突入する時期はタイミングとしては最良だ。

「手術して治るのであれば、何回でも手術しますよ。そのくらい俺はいまだにプロレスが好きですね。割とよくあるケガですから、あまり悲観的にはなってないです」と迷うことなく言い切った。

 今年の6月で40歳を迎える。古傷のヒザも含め満身創痍は否めない。それでも「ヒザも目もそうですけど、プロレスラーを目指してなければ、おそらくこうはなってない。でも俺の中で後悔はないですね。むしろ一生懸命やった結果なので、その証しみたいなものです。他の選手も元に戻らない部分っていうのは抱えているはずなので。それは言い訳にしたくないです」と話し、復活へ強い意欲をのぞかせた。

 何度も苦境に追い込まれ、そのたびに立ち上がる姿を見せてきた。困難の先の栄光をつかみ取ってきた「逆転の内藤哲也」が、真価を問われる時がまたしても訪れた。