ゴールデンウイークに鷹の大砲が大暴れするのには理由がある。ソフトバンク・柳田悠岐外野手(33)が4日のオリックス戦で2試合連続となる殊勲の決勝弾を放った。1―1で迎えた7回二死、近藤の初球151キロ真っすぐを左翼席へたたき込む会心の4号ソロ。1950年の2リーグ制導入後、リーグ最速となる通算5000勝を達成する記念すべき勝利に導いた。

 いつもより多めにアドレナリンが出ているはずだ。かねて、柳田は大型連休中のゲームや地方開催の試合で自然と腕をぶしてきた。普段、プロ野球の公式戦を生観戦できないファンや子供たちを意識してのことだ。この日もペイペイドームの駐車場には、他県ナンバーの車が数多く止まっていた。球団キャップをかぶった子供たちの姿も多かった。頻繁に通えないファンや子供たちにとって、お目当ての選手が活躍することがどれほどうれしいことか――。実体験として知っている。

 広島出身でカープファンとして知られる柳田は少年時代、家族で広島市民球場に通っていた。「ライト側によく座っとったと思います」。大のお気に入りは、トリプルスリー(シーズン打率3割、30本塁打、30盗塁以上)達成者の野村謙二郎。自身の体験から、憧れの選手が観戦した試合でホームランを放つ姿は一生の宝物だと知っている。打球の残像、風に乗って漂うソースの香りまで、五感すべてで球場の風景を鮮明に覚えている。鷹党は少し切ない気持ちになるかもしれないが、柳田が今もカープの話題を振られていつもニコニコ顔で答えるのは、かけがえのない〝幸せな思い出〟であふれているからだ。もちろん出場するすべての試合で全力を出し切るが、知らず知らず力が入るのは生い立ちが影響しているからかもしれない。

 子供好きで知られる柳田。2日連続で上がったお立ち台では、こう締めくくった。「明日(5月5日)は『こどもの日』なので、子供たちのために打てるようにこれから準備したいと思います。今日はみなさんありがとうございました。ゴールデンウイーク、あと何日あるか知りませんけど、思う存分、楽しんでください!」。鷹の主砲であり、球界のスター。念じれば、また打ってくれるはずだ――。