阪神はここまで37試合を消化し、12勝24敗1分けのリーグ最下位。首位・ヤクルトと9・5ゲーム差の借金12と厳しい状況に変わりはないが、5月に入り明るい要素もいくつか出始めてきた。その中でも特筆すべきは、ブルペン陣の劇的な大復活だ。

 救援陣が総崩れし、最大で7点差あったリードを大逆転された開幕・ヤクルト戦(3月25日、京セラ)以来、再整備の必要性を指摘されてきた虎ブルペン。だが今や新守護神の岩崎(防御率0・79)を筆頭に湯浅(同1・26)、岩貞(同1・23)、加治屋(同1・69)、浜地(同1・93)など防御率1点台以下の好投手がひしめく。昨オフにソフトバンクから戦力外通告を受け、阪神と育成契約を結んだ新加入左腕・渡辺雄大(30)に至っては、開幕から11試合に登板し無失点投球を継続中。防御率は当然ながら0・00。今年3月になってようやく阪神と支配下契約を締結したばかりの苦労人左腕は、猛虎名物・中継ぎ再生工場の新たな象徴だ。

 そんな渡辺が最大の〝危機〟に陥ったのが5日のヤクルト戦(甲子園)。1―1の6回から2番手として登板したが山田の右前打、村上への四球などで一死一、二塁のピンチを背負うことに…。ここで阪神ベンチは23歳右腕・浜地をマウンドに送ることを決断した。

 球団関係者は「浜地がグラウンドに出ていくとき『浜地! 絶対に点取られんなよ! なべじい(渡辺)の(無失点)記録を壊すんじゃねえぞ!』と金村投手コーチがゲキを飛ばす声がブルペン内から聞こえてきた」と振り返る。一人でも走者の生還を許せば渡辺に失点が記録される場面だったが、ここで浜地はオスナを右飛、宮本を二ゴロに抑える気迫の好火消しを披露。渡辺の無失点記録を継続させるとともに、3―2の劇勝にも大きく貢献した。「あの後、渡辺も『はまちぃ~! ありがと~!』って感謝しきりだったよ。中継ぎ陣全体がいい成績を残せているのもこういった〝チームワーク〟があるからこそだよね」(前出の関係者)

 ブルペン内の雰囲気の良さが伝わってくる舞台裏の一幕。〝新生・虎の中継ぎ課〟は今日も一丸でチームのために腕を振る。