東京・渋谷区役所が先日、「近年、寄生虫『アニサキス』による食中毒(アニサキス症)が多発しています。アニサキスが体内に取り込まれることによって、胃や腸に激痛をもたらすことが特徴です」と警鐘を鳴らした。実際、海産魚介類に寄生するアニサキスによる食中毒が全国的に多発している。

「2017年にはピン芸人の渡辺直美がアニサキスによる食中毒を起こしている。同年にお笑いコンビ・品川庄司の庄司智春がイクラ丼を食べて食中毒。胃の中は傷で血だらけ。胃から8匹のアニサキスが発見されたんです」(吉本関係者)

 アニサキスは体長2~3センチの半透明白色の寄生虫で、生きたまま人の胃や腸壁に侵入すると、強烈な腹痛や吐き気などの食中毒を発症する。

 食と環境の科学センター関係者は「アニサキスの最終宿主はクジラ、イルカなどの海生哺乳類。中間宿主である魚に寄生しているアニサキスは幼虫で、人間の体内では成虫になれないので通常は1週間ほどでそのまま排泄される。しかし、その間、人によって無症状だったり、軽い痛みだったり、激痛を伴う食中毒を起こしたりすることがある」と語る。

 寄生している主な魚介類はサバ、サンマ、イワシ、アジ、ニシン、ホッケ、タラ、サケ、マス、ブリ、カツオ、イカなどだ。

 ある食品衛生管理者は「日本では古くから魚介類を刺し身やすしなど生のまま食べる文化が根付いている。それでも、かつてカツオ、マグロは必ず冷凍されて運ばれたし、傷むのが早いサバ、サンマやニシンは生食しないものだった。しかし、コールドチェーンと輸送技術の発達で近年、多くの魚が生食可能となった。何でも生で食べたいという日本人特有の欲望が強いことで、アニサキス症が増加していると考えられる」と指摘する。

 予防法は60度以上で1分間以上の加熱をすること。また、マイナス20度以下で24時間以上の冷凍をすること。そうでなければ、魚介類を処理する際に新鮮なうちに速やかに内臓を除去し、刺し身を食べる際、目視を徹底すること。アニサキスには要注意だ。