大みそかの紅白歌合戦は打ち切りの方向で進められている――。10日発売の月刊「文藝春秋」6月号で仰天記事が掲載された。NHKの前田晃伸会長が断行する〝改革〟の一環として、紅白にもメスが入るかもしれないという。事実だとすれば、歌手や国民にとっては衝撃的だ。そこで追跡取材すると、紅白の〝Mステ化〟が浮上してきた。

 今回「文藝春秋」に告発したのは、NHKの「職員有志一同」。前田会長は、2020年に同職に就任すると「スリムで強靭(じん)なNHK」をキーワードに大胆な改革を進めてきた。それは、組織、人事制度、番組内容にも及ぶが、同誌によると「あまりに強権的でずさんな改革が断行されている」という。そのため、NHK職員はその方針に未来が描けずに退職、転職が相次いでいるというのだ。

 ある芸能プロ関係者は「今の会長になってから人事が最悪という話をするNHK局員は多い。もともと銀行出身の会長ですから、テレビのことをわかっていない。にもかかわらず、会長になったことで任期3年のうちにつめ跡を残したいのでしょう。いろいろやりたがるんだけど、結局分かっていないから、局内は混乱をきたしているようです」と話す。

 人気長寿番組である「ガッテン!」(今年2月終了)や「バラエティー生活笑百科」(同4月終了)が打ち切られたのも、前田会長による露骨な番組介入によるものだという。しかも、紅白歌合戦まで打ち切りの方向で進められているというから穏やかではない。

 前田会長は同誌に「番組全部を見直すだけで、変えるかもしれないが、やめるとまでは言っていない」とコメントしているが、ある音楽関係者は「このままいけば〝歌合戦〟というような形はなくなるかもしれない」とこう続ける。

「司会者の紅組、白組をなくしたのも会長の〝改革〟の一環と言われています。この流れが続くようなら〝歌合戦〟ではなく、『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)や、『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE』(テレビ朝日系)のような大型音楽番組のようになるんじゃないかと言われているのです」

 実際、局内で例年ではみられない〝ある異変〟があるという。

「本来なら、そろそろ紅白の総合演出は誰がやるといった内々の打診があってもいい時期なんですが、それもない。さすがに紅白歌合戦をやらないという選択肢はないとは思うんですが、例年に比べれば動きがかなり遅いのは気になる」(レコード会社関係者)

 ただでさえ、紅白には逆風が吹いている。昨年の平均世帯視聴率は、トリを含む第2部で34・3%。これは2部制となった1989年以降で過去最低だからだ(視聴率は関東地区、ビデオリサーチ調べ)。とはいえ、30%を超える視聴率をいまだ獲得しているのも事実。それだけの大型番組を「やめます」というのは簡単ではない。

 そもそも紅白がなくなった場合のNHKのデメリットも決して少なくない。

「紅白出場にはいろいろな条件がありますが、その中の一つに『NHKの貢献度』がある。それが出場可否にどこまで反映されているか分かりませんが、その建前がある以上、歌手としてはNHKをむげにはできません。『のど自慢』や『うたコン』なら喜んで出ますが、一曲も歌えない番組だって、オファーはある。それでも『貢献度』が紅白の条件にあるから、出ているという歌手だっています。もし紅白がなくなれば他の番組への出演も滞るでしょう。それほど影響の大きい番組なんです」(前出の芸能プロ関係者)

 関係者が口をそろえるのは「紅白はなくならない」ということだが、改革を断行してきた前田会長だけに、予断を許さないことだけはたしかだ。