内田也哉子(46)が13日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われた映画「流浪の月」(李相日監督)初日舞台あいさつで母・樹木希林さんの“とんでもエピソード”を明かした。樹木さんは、李相日監督の10年「悪人」に出演した際、同監督があまりに撮影で粘るため、東京に帰る飛行機に間に合わなくなりそうなタイミングで「これ以上、良いの撮れない!」と言い放ち、撮影していた長崎の離島の現場から東京に逃げ帰ったという。

内田は劇中で松坂桃李(33)が演じた、誘拐事件の加害者とされた佐伯文の母音葉を演じた。「オファーをいただいて、後ずさりしてしまった。姿形は母の樹木希林に似ているので…きっと、そういう演技力を求められているのではないか? とんでもない、私はいつも仏頂面で表現力が乏しい。無理だと思った。重要な役どころなので難しいと丁重にお断りした」と1度はオファーを断ったと語った。

その上で、李監督から「そもそも演技力は求めていないですので大丈夫です。気持ちが理解できれば、その場に、存在しているだけで大丈夫です」と書かれた手紙が送られてきたと語った。さらに手紙には、李監督が「悪人」の撮影時に樹木さんから「監督は、しつこい」と言われたエピソードを踏まえ「私も、お母さんに『しつこい』と言われましたので…1度、会いましょう」とも書かれていたという。

その後、対面し、オファーを受けた内田は、実際に李監督の演出を受けた。「桃李さんと長い時間、本読みして『どう思う?』と聞いていただいた。1人1人の魂に向き合うと時間がかかるんだなと、すごくふに落ちた。1つ1つ教えていただきました」と振り返った。

内田は、檀上で知られざるエピソードを尋ねられると再び「悪人」撮影時の樹木さんの“とんでもエピソード”を明かした。

「『悪人』で、長崎の離島みたいなところで撮影していて、松尾スズキさんとのシーンかな? 絶対に、その日中に飛行機に乗って東京に帰らなきゃ、次の日に仕事があると前の日にお願いしていたけれど、李監督が粘りに粘るので、なかなか終わらず…。母は何と今、車に乗らないと飛行機に間に合わないという瞬間に『監督! これで、良いの撮れた! おしまい! これ以上、良いの撮れない!』と、共犯者を探して、松尾スズキさんの手を引いて、ダーッと逃げて帰ってしまった」

内田は、ひとしきりエピソードを語ると「母から聞いて…私は、その時、笑えずに呆然として…李監督をはじめスタッフの皆さんが、どのような思いで取り残されたんだろうという…代わって申し訳ありませんでしたという気持ち」と、樹木さんに代わって李監督に謝罪した。

李監督は「ちょうど、松尾さんのところに乗り込んで『お金を返せっ!』と言い、足にしがみつくシーン。『帰りたい!!』っていう気持ちで、しがみついているのがヒシヒシと伝わってきて、良い演技だったと思うんです」と笑った。