勝って地元に恩返しだ。大相撲夏場所6日目(13日、東京・両国国技館)、関脇阿炎(28=錣山)が大関貴景勝(25=常盤山)を引き落として4勝目(2敗)。取組後は「素直にうれしい。内容自体はあまり良くないけど、体が動いているからいいと思います」と冷静に振り返った。

 新関脇で勝ち越した先場所から好調を維持する阿炎は地元の埼玉・越谷市で「こしがやの未来を創る魅力宣伝大使」を務めている。市によると、知名度やブランドイメージの向上を図るため、著名人に自身の活動を通してPRしてもらうことが目的だという。阿炎のほかにも、競泳女子で元五輪2大会メダリストの星奈津美氏やモデルの益若つばさら同市出身者が名を連ねている。

 この取り組みは2018年11月に市制施行60周年を記念してスタートし、昨年4月からは「2期目」に突入した。同市担当者は「引き続き頑張っていただきたいということで(再び)就任してもらっています」と説明。阿炎は一昨年にコロナ対策の規則(不要不急の外出禁止)に違反して3場所出場停止処分となった。それでも〝続投〟を要請したのは、復活への期待の表れだ。

 実際、幕下から再出発した阿炎は日ごろの言動も「優等生」に大変身。地元関係者からは「自分を鼓舞するような表現を控えて最近の落ち着いている様子を見ると、いろんなことを経験してきたんだなと。立派になったと思うし、さらに上(大関)を目指してもらいたい」との声が上がっている。

 大関昇進の起点とするには2桁白星が最低条件。阿炎は「まだまだ(集中力が)足りない。しっかり一番一番集中していきたい」と気持ちを引き締めた。