ボクシング界のレジェンドで元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎が15日、地元・大阪で52歳の誕生日を迎えた。1999年1月に他界した最愛の父・粂二さん(享年52)の年齢に到達した心境を「不思議な感覚。特別やね」としみじみ語った。

 52歳になった今も現役を続ける辰吉。朝のロードワークに始まり、大阪帝拳ジムでのトレーニングは20代と何ひとつ変わっていない。

「人間そうそう変わらない。誰に何と言われようが変えるつもりもない。世界チャンピオンになるまで、辰吉は辰吉として生きるだけ」

 体重は世界王者になった当時と同じ58キロ。代謝が落ちたため「食べる量は減らしている」というが、再びベルトを巻く日まで節制したボクサー生活は続く。

 1998年12月、WBC世界バンタム級タイトルマッチで挑戦者のウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)に6回TKOで敗れた。マットに大の字に倒れる衝撃的なKO負けで王座陥落。その1か月後、男手ひとつで育ててくれた粂二さんが亡くなった。

 あれから23年――。特別な日を迎えた辰吉は「やっと父ちゃんと肩を並べたかな。まあ、ワシは父ちゃんより長生きするで」とほほ笑んだ。これまで「父ちゃんに勝てるところは何もない」と言ってきたが、子と孫を思う気持ちは負けていない。

 長男・寿希也(30)、次男・寿以輝(25)は立派に成長し、孫も誕生。スマートフォンの孫の画像を眺めて「もうおじいちゃんやで」と相好を崩した52歳の〝浪速のジョー〟。生涯すべてを自分にささげてくれた粂二さんに、ようやく「父」として追いついた。