元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が17日、「めざまし8」(フジテレビ系)で、山口県阿武町の4630万円誤送金問題について解説した。
阿武町は先月8日、コロナ禍支援として対象の463世帯に10万円を臨時特別給付金を給付するはずだったが、誤って男性(24)に全額振り込んだ。町は返金をお願いしたが、男性は応じず「お金はすでに動かした。もう戻せない。犯罪になることはわかっている。罪は償う」などと話した後、勤務先も辞め、同町は男性と連絡が取れなくなったとされた。
男性の口座から誤送金の2週間後までに約4600万円が2つの国内の銀行に移動された。町は12日、男性に弁護士費用などを合わせた約5116万円の請求金額を求めて山口地裁萩支部に提訴していた。
この問題で16日、男性の弁護士が山口市内で会見し「男性は現在、その金を所持していない。現実的な問題として返還が難しい状態。財産的価値のある物が手元に残っている状態ではない」と男性が使い切ったこと、男性が山口県警の任意聴取を2回受けていることなどを明かした。弁護士は「訴訟で何らかの解決が図れるように検討したい」としている。
番組では、金の使い道についてギャンブルや借金返済の可能性があると指摘。同町副町長によると「借金に充てたかと聞いたら『借金ではない』と話している」というが、MCの俳優・谷原章介は「(実際は)使っていない、借金の返済でもない。隠している可能性もあるということですけど、どう隠すんですかね」と話を振った。
これに若狭氏は「あくまで一般論ですが、こういう多額のお金が入った時には本当は返さなきゃいけないが、どんな心理状態になるかというと、一つのパターンとしてはどこかに隠しといて、罪に問われて刑務所に仮に2~3年行ったとして、出てきた時にそのお金を使えるようにする。犯罪として処罰されてもその後お金を使える。10~20万円だったら、使い込んで処罰されるようだったらやらないということになるんですけど、2~3年刑務所にいったとしても出てきた時にその後の生活で使える。そういう類の人は天秤にかけて隠しとこうと考える。方法としては誰かにお願いするとか、わからない形でするんですけど、今回は警察が動いているので、お金の動き、資金移動について警察はつかんでいるはず」と分析した。
罪に問われた場合の量刑について、若狭氏は「全額弁償しないとして裁判になった場合には実刑で執行猶予がつかない形で3年前後、刑務所に行くという判決になる可能性が高い」。民事的には「町が勝訴すると、ずっと返さなきゃいけないという義務は続きます」とも解説した。
男性は振り込まれた現金をスマートフォンの操作で送金したことも判明。スマホは警察の任意提出に応じているが、若狭氏は「スマホの分析によっていつどこで送金したか、誰かと電話やメールなどでやりとりをしてないかがわかる。警察としては、これで何もできないとなると、今後の日本社会におけるこうした類のものを黙認するような形になってしまう危機意識はあると思う。法に照らして犯罪として立件するという意気込みで捜査するというのは間違いない」と逮捕の可能性を指摘した。