1992年(平4)9月に発生し、未解決事件のまま07年に時効が成立した「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」をモチーフにした映画「とら男」(村山和也監督、8月6日公開)の会見が26日、都内の映画美学校試写室で行われた。

主演した西村虎男さん(72)は、石川県警捜査1課の元刑事。自ら犯人の目星をつけながらも、逮捕に至らなかった「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」の時効から15年がたち、当事者でありながら、現実とフィクションの二重構造を軸に事件の謎と真実を世間に問う映画に、本人役で主演した。

西村さんは、会見の冒頭で「こういう場所に立つのは初めて」と照れたが、その後は雄弁に語った。実際の未解決事件をモチーフにした映画に、しかも当事者として自身を投影した役に主演したことで、石川県警とのあつれきはあったかと聞かれると「あつれきは、ないんですけど」と答えた。

未解決事件が生まれる要因を聞かれると「全国的に、いろいろな未解決事件があります。要は、自分自身の経験から現場を見て、推理して、検証し、間違っていたらまた検証する、推理、検証の繰り返しで(真相に)たどり着く。推理が間違っているか、検証が間違っているか、どちらか」と持論を展開。その上で「捜査本部事件を仕切る幹部が実際問題、階級社会であるからベストではない。実務経験がなくて指示すると、経験不足をカバーするように指示すればいいけれど(経験がないのを)棚に上げて階級のみで指示すると、おかしな方向に進む。捜査指揮が、ものすごく影響する」と、警察の階級社会が未解決事件を生む温床になっていると指摘。「半分は捜査指揮の問題で未解決になったのがある。こんな難しくない事件なのに…警察組織そのものが、いびつだから(未解決事件に)なるんだと思っています」と断言した。

「とら男」は、ある事件のことが忘れられないまま孤独に暮らしている元刑事とら男(西村)が、ある日、東京から植物調査に来た女子大生かや子(加藤才紀子)と偶然出会う。とら男の話に興味を持ち、事件を調べ始める、かや子。誰からも忘れられた事件はゆっくりと動きだしていく。かつての未解決事件の真相に迫る、セミドキュメンタリータッチのミステリー。

西村さんは「表情も、すごく味がある。刑事のとらさんみたいな役どころで、俳優業に転身する可能性は?」と聞かれると「ないです」と即答した。撮影現場では米俳優トミー・リー・ジョーンズ(75)に似ていると言われ、気を良くしていたというが、俳優への挑戦は「しません」と笑いながら否定した。

この日は、かや子役の加藤才紀子(28)も登壇した。