フランスで開催中のカンヌ映画祭で26日(日本時間27日)コンペティション部門に出品された、是枝裕和監督(59)が手掛けた初の韓国映画「ベイビー・ブローカー」が公式上映された。上映後、日本のメディアの取材に応じた是枝監督は、ロシアの侵攻を受けているウクライナに対し、同映画祭が支持を表明していることなどを踏まえ「抵抗なら抵抗…声の小さい人に開放し、使ってもらう場所として映画祭を開いていく態度が、すごくカンヌは明快。そこを、僕は1番、リスペクトしています」と高く評価した。

カンヌ映画祭は開幕前に、ロシア政府関係者や同国の支援を受けた作品の受け入れを拒否すると表明し、5月6日のオープニングセレモニーには、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が生配信で出演。またプーチン政権の批判を続けてきた、ロシアのキリル・セレブレンニコフ監督の「チャイコフスキーの妻」が、最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品され、18日に公式上映が行われた。19日にも、16年の映画「マリウポリ」の続編となるドキュメンタリーを製作しようとマリウポリで撮影中、ロシア軍に殺害されたリトアニア人のマンタス・クベダラビチュス監督の撮影した映像を、婚約者が編集者とまとめた遺作「マリウポリ2」が上映された。

是枝監督は、18年に「万引き家族」でパルムドールを受賞して以来4年ぶり、しかも新型コロナウイルスの世界的なパンデミック以降、初の参加となったカンヌ映画祭への思いを聞かれると「今回に限らないと思いますけれども、非常に政治的な状況、動きがある中での映画祭の開催というのは、映画祭にとっても、すごく試練だと思うんですよね」と切り出した。その上で、カンヌ映画祭が前回の21年にも、19年に香港で展開された反政府デモのドキュメンタリー映画「時代革命」(周冠威監督)をサプライズ上映した経緯を踏まえ「ただ、カンヌも昨年もやっぱり香港の状況に対して、いち早く作品を上映するという選択をしましたし、今回もそこは明快に態度を表明していますし」と口にした。

そして「ウクライナのことだけではなくて、レッドカーペットというのが、華やかな映画人がスポットライトを浴びるという場所ではなくて、あの場所でいろいろなこと…抵抗なら抵抗、声の小さい人にあの場所を開放し、使ってもらうというのかな…そういう場所として映画祭を開いていくっていう態度が、すごくカンヌは明快だなと思う。そこを、僕は1番、リスペクトしていますし、映画祭とは改めて、そういう場所なんだなと、4年ぶりに来て認識しました」と、かみしめるように語った。