数々のオリジナルミュージカルを生んできた音楽座ミュージカルの代表作「ラブ・レター」(7月1~3日、東京・草月ホール)に期待の若手が出演する。岡崎かのん、20歳。高校時代に音楽座ミュージカルに入り、今回、主演の1人に抜てきされた。「うれしさよりも、逃げられないぞという気持ちの方が強いです」。

「ラブ・レター」は浅田次郎氏の短編小説をもとに2013年に初演され、15年に再演された。7年ぶり上演の今回は新脚本・新演出。新宿歌舞伎町のチンピラのサトシと昔なじみのナオミを軸に、サトシの兄貴分だった吾郎と1度も会わずに偽装結婚した中国人白蘭との悲しい別れを通じて、死者が生者を生かす物語。

岡崎は「影響を受けすぎてもいけないので、前回の舞台映像は1度だけ見ました。過去のいい部分は取り入れつつ、新しい『ラブ・レター』を作っていきたい」。

白蘭は会ったこともない吾郎に1通の手紙を残して病気で亡くなる。「瞬間、瞬間を必死に生き抜いた、真っすぐ女性。手紙に『ありがとう』と感謝の言葉があるけれど、その思いが彼女の生きる力になったように思います」。ソロで歌うナンバーは1曲だけだが、「100%以上の力で歌って、白蘭として力強く存在していたい」。

岡崎は「テーマパークで見たミュージカルの華やかさにあこがれて」3歳からバレエを習い、5歳から市民ミュージカルなどに出演した。「ミュージカルを自分の仕事にしたい」との思いから、16歳でも受け入れてくれる音楽座ミュージカルに入団。「もっとレッスンに打ち込める時間がほしい」と全日制から通信制の高校に転校した。

コロナ禍で稽古にも参加できない日が続いた。「舞台に立つのは当たり前のことじゃないと気が付いて、より舞台への思いが強くなりました」。「SUNDAY(サンディ)」「リトルプリンス」に出演し、「7dolls」トライアウト公演では主演するなど、ミュージカル女優として着実にステップアップしている。

「毎日が楽しくて幸せです。ミュージカル女優になるという夢がかなったけれど、これからの道のりは長いと思います。作品に込められたメッセージを見る方にしっかりと届けられるような女優になりたい」。「ラブ・レター」が飛躍の一歩になる。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)