世界3大映画祭の1つ、第75回カンヌ映画祭授賞式が28日(日本時間29日)、フランスで行われた。是枝裕和監督(59)初の韓国映画「ベイビー・ブローカー」(6月24日公開)主演のソン・ガンホ(55)が韓国人俳優初の男優賞を受賞した。18年「万引き家族」に続く最高賞パルムドールの受賞はならなかったが、04年「誰も知らない」で日本人初の男優賞に輝いた柳楽優弥(32)以来の受賞に、同監督は「自分の映画に出た役者が褒められるのが一番うれしい」と喜んだ。

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是枝監督は授賞式後、日本メディアの囲み取材に応じ「英語圏で撮ってみたい」と意欲を口にした。フランスと共同制作した19年「真実」から連続で海外での映画製作を経験し「やれたこと、やれてないことをチェックしないと。米ハリウッドと言うと大きくなってしまうが、今回の総括が済んだら考えてみようと思います」と語った。

日本映画界への危機感も口にした。カンヌ映画祭で主要賞2つを獲得した韓国映画界に飛び込み「学ぶこともたくさんありました。日本の映像産業、映画文化も含めて変えなければいけないところは、明快になってきている。日本映画界全体が危機感を持つべき。もう何年か、このままいくと手遅れになると個人的には思っています」と語った。

フランスの国立映画映像センター(CNC)のような、製作や配給への助成金を出す持続可能なシステムを作る働き掛けも行う是枝監督だけに、日本映画界改善への思いは切実だ。

○…ある視点部門に出品された「PLAN 75」(6月17日公開)の早川千絵監督(45)に、新人監督賞「カメラ・ドール」に準ずるスペシャルメンションが授与された。是枝監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の1篇を新たに構築した早川監督は「私にとって特別で大切な1本目の映画を評価してくださって本当にありがとうございます」と感謝。カメラドールはエルビス・プレスリーさんの孫の米女優ライリー・キーオ(32)と英国のジーナ・ギャメルの共同&監督デビュー作「WAR PONY」が輝いた。