“キック界の神童”こと那須川天心(23)とK―1のエース・武尊(30)による世紀の頂上決戦がいよいよ迫ってきた。立ち技メガイベント「THE MATCH 2022」(6月19日、東京ドーム)がキックラストマッチとなる那須川は今、何を思うのか。前後編の2回にわたりお届けするインタビュー前編では、ライバル武尊にかねて抱いてきた複雑な感情と、11日に死去したお笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」の上島竜兵さん(享年61)への思いを語った。
【那須川天心インタビュー・前編】
――現状は
那須川 しっかりと研ぎ澄まされてきている感じです。
――キック最後の試合でK―1の選手と戦う
那須川 不思議ですよね。K―1を見てキックボクシングを始めて、最後の敵がK―1っていうのが。こんなことになるのかって。
――無敗で最後にK―1のエースと戦うとは予想できなかったと
那須川 ここまでうまい形になると思わなかったです。最初のころは「勝ったり負けたりとかあるんだろう」と思ってましたし。
――それは意外だ
那須川 もちろん負けるつもりはないですけど「いつか負けるのかな」というのはありましたよ。勝負って運の要素もあるので、そういう部分であるかなと思ってました。でもこの最後の試合も勝って終わろうと思います。
――改めて武尊の存在とは
那須川 最初は俺よりずっと目立ってたじゃないですか。テレビとかメディアにも出ていて。そこに対する嫉妬みたいな、悔しさみたいなものはありました。「戦おうよ」って言っても戦えないし、どうしたらいいんだよって。だから(目の前の試合に)勝つしかないでしょってやってましたね。
――それが逆転して武尊から対戦を求められるようになった
那須川 僕は割とドライというか、ないんだなってある時に思ったんですよ。(2019年の)「RISE WORLDSERIES」(で開催した58キロ級トーナメント)を取ったくらいまで「あるかな」と思ってたんですけど。(優勝後に)呼びかけて「これでなかったら、もうないな」って思いました。
――今回はリング上のみならず、さまざまな経緯の集大成にもなる
那須川 そうですね。全部において。正直、格闘技って勝った方が全て取るっていう部分はあると思います。でも今回の試合はそうでもないと思うんですよ。今後もこういう対抗戦ができる可能性は低いとは思うんですけど、今回一回行われたことでまたチャンスはあるかもしれないじゃないですか。だから僕だけじゃなく、RISEのみんなで勝ちにいきたいです。そのための合宿もしましたし。
――ところで、先日亡くなられた上島竜兵さんと共演したことがあった
那須川 すごく優しくて、お会いできてうれしかったです。
――20年12月の共演で一緒に熱湯風呂にも挑戦した
那須川 めっちゃやりたかったんですよ、熱湯風呂。ダチョウ倶楽部のネタって、みんながつくり上げるギャグじゃないですか。そういうのがすごい好きで。絶対、誰しもが学校でやったことがあるじゃないですか。
――お茶の間に知られるという意味では目指すところでもある
那須川 だからこそやってみたかったんですよね。竜兵さんと一緒に熱湯風呂ができて一生の思い出というか。ありがとうございましたという気持ちです。
――3月に一緒に練習した平良達郎がUFCで白星デビューした。刺激になったのでは
那須川 そうですね。俺が教えた寝技で、俺の言った通りの戦術で(ニヤリ)。練習した時に思ったんですけど、探求心がありますよね。強い選手に通じるものを持ってるなって思いました。
☆なすかわ・てんしん 1998年8月18日生まれ、千葉・松戸市出身。5歳から空手を始め、2014年7月にキックボクサーとしてプロデビュー。18年大みそかのボクシング元5階級制覇王者フロイド・メイウェザーとのエキシビションマッチが世界的な話題に。戦績は46戦46勝(32KO)。キックボクシングルールで41戦41勝(28KO)、MMAルールで4戦4勝(3KO)、ミックスルールで1戦1勝(1KO)。現RISEフェザー級王者。165センチ。