〝キック界の神童〟こと那須川天心(23)が、K―1のエース・武尊(30)との「世紀の頂上決戦」を控えた胸中は――。立ち技メガイベント「THE MATCH 2022」(19日、東京ドーム)に向けた単独インタビューの後編。今後の立ち技格闘界への期待や、リング外で孤独に続けていたもう一つの〝戦い〟について明かす。


【那須川天心インタビュー・後編】

 ――キックラストマッチに向けて取り組んでいることは

 那須川 ずっと同じです。今までやってきたことをやるというか。本当に最後の集大成なので、自分を全部出せるようにしたいですね。(相手への対策よりも)その方が意識は強いです。キックボクシングを15歳から今までやってきたことすべてを出したい。

 ――5月中旬にはRISE勢で合宿を行った

 那須川 今まで「ジムで勝ちにいこう」っていうのはありましたけど「団体でやる」っていうのは初めてで。メンタル面でもプラスだったし、みんな向いている方向が同じなので、一緒に戦っている感じはありました。

 ――以前「勝負には運の要素がある」と話していた。武尊戦に運はどれくらい介入しそうか

 那須川 だいぶあると思います。20%くらいはあるんじゃないですか。最後はそこですからね、お互い。

 ――その20%を引き寄せる自信は

 那須川 ありますよ。今までもしてきましたから。そういう運命なんだと思っています。俺が負けたら全てが終わってしまう。負けたらいけない運命だと思うし、そこは決まっていると思います。(今回は)自分のためだけの試合じゃないと思うので、今後のためにも俺が勝たなきゃ始まらないですよ。

 ――「今後」というのは格闘技界の?

 那須川 格闘技全体もですし、社会的にもだと思うんですよね。(この試合の波及効果は)格闘技だけとは思っていないので。地球を動かすというか。そういう規模の試合に俺はしたいです。

 ――ジャンルを超えて注目されている

 那須川 このカードが決まっただけで「チケットが取れない」とかいろいろ話題になって。カルチャー的にも歴史に残るっていうか、その部分に関してうれしいっていうのはありますよね。

 ――今回は試合前に話題づくりをする作業から、久々に解放されたのでは

 那須川 もともとそこにストレスはないですけど「試合までどうやって構成して、演出して盛り上げたらいいのか」とか考える必要はないですよね。SNSの更新も減りましたし。でも、ファンの方からメッセージとかで「寂しい」っていう声が結構あります。

 ――なぜストレスを感じなかったのか

 那須川 つらいっていうよりか、それが当たり前だと思っていたので。確かに最初は大変だったんですけど。戦うことがすべてで、その中でどういうふうに演出するか。見てもらわないと意味がないけど、ただ「試合をやります」では、誰も見ないですから。そのためには人生というか、それをコンテンツにしていかないといけないと思います。

 ――なんで他の選手はやらないんだろう?と思ったことはないのか

 那須川 自分の名前を大きくするのが大事だと思うので「なんでだろう」と思うことはあります。でも、やっている人が少ないからこそ、それをやっている人が抜きんでることができるんだと思います。

 ――キック界に今後、そんな選手が出てきてほしいか

 那須川 出てきてほしいし、団体でもつくっていかないといけないと思います。(総合格闘技では)RIZINがずっとそれをやっていると思うんです。みんな新しいこととか刺激を求めますから。見たいと思わせることが大事だと思います。

 ――最後に、試合に向けて意気込みを

 那須川 本当の最後ですから。ちょっとした動きだったり、すべてにおいて注目してほしいです。


 ☆なすかわ・てんしん 1998年8月18日生まれ、千葉・松戸市出身。5歳から空手を始め、2014年7月にキックボクサーとしてプロデビュー。18年大みそかのボクシング元5階級制覇王者フロイド・メイウェザーとのエキシビションマッチが世界的な話題に。戦績は46戦46勝(32KO)。キックボクシングルールで41戦41勝(28KO)、MMAルールで4戦4勝(3KO)、ミックスルールで1戦1勝(1KO)。現RISEフェザー級王者。165センチ。