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『誰も知らない』『花よりもなほ』といった意欲的な作品で、独自のポジションを確立しつつある俊英、是枝裕和監督の最新作『歩いても 歩いても』がついに完成。そのお披露目が3月6日にシネカノン有楽町1丁目で行われ、阿部寛、夏川結衣、樹木希林、原田芳雄ら豪華キャスト陣が舞台あいさつに登壇した。

ここ最近、出演作では“変わり者”を演じることが多い阿部寛が、今作で老いた父との確執を乗り越えようとする等身大の男に扮し、俳優としての力量を改めて印象付ける好演を披露した。「今までの自分にはない顔をしている」と自身の演技を振り返る阿部。初となる是枝作品への出演については「人間の細かい部分をリアルに描いてくださった。撮影中は家族の一員として現場にいることができた」と役柄に入り込みながら、自然と作品のテーマである“家族”について考えたと語った。

そんな阿部を主演に、飾らないホームドラマを完成させた是枝監督は「永遠に整理がつかない映画」という原田芳雄のコメントを受け、「今も自分自身と作品との関係が整理できずにいる。今まで生きてきた中での実感をストレートに出した映画なので、ずっと切り離せないままかもしれない」と作品に対する思いを語り、「今後、この作品がどう広がってくれるか楽しみにしている」とぎっしり埋まった客席にメッセージを送っていた。

『歩いても 歩いても』は15年前に亡くなった長男の命日に、離れて暮らす家族が実家に集う一日をたどるヒューマンドラマ。実力派キャストが織りなすアンサンブルも見どころで、上映後の観客の評価も上々だった。

取材・文・撮影：内田涼

『歩いても 歩いても』
6月下旬、シネカノン有楽町、渋谷アミューズCQN、新宿武蔵野館他全国ロードショー

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