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極悪なのに惹かれてしまう、古田版「リチャード三世」の魅力
2009年01月20日 13時18分 [演劇]
「リチャード三世」開幕
古田新太 撮影:引地信彦

1月19日、舞台「リチャード三世」の東京公演が開幕した。俳優生活25周年を迎えた、劇団☆新感線の看板俳優・古田新太が満を持してリチャード三世を演じること、同劇団演出家・いのうえひでのりが真っ向からシェイクスピアに挑むこと、そして、11年ぶりに安田成美が舞台に挑戦することなどで話題を呼んでいた作品だけに、開場時間前から入口には長蛇の列ができていた。

黒を基調にした薄暗い舞台にはうっすらスモークがかかり、ライトが観客席を鋭く照らしている。舞台には大小のモニターが配置され、劇場前の風景を映し出す。一瞬、全モニターが消え、映像が変わると舞台中央でひとりの男が独白を始めた。そう、この男こそ悪名高いグロスター公、後のリチャード三世(古田新太)その人だ。彼の台詞は、モニターに文字で流れていく。シェイクスピア独特の長台詞、複雑な人間関係も、台詞にリンクした映像と文字が登場するお陰で物語世界がすっと頭に入り、自然にリチャードがこれから行おうとしている悪行の世界に引き込まれていく。

「リチャード三世」は15世紀のイングランドを舞台に、王位を目指し、次々と血縁を陥れ、悪の限りを尽くしてのし上がって行くリチャード三世の姿を描いたピカレスク(悪漢)ドラマの決定版だ。手段を選ばず野望を成し遂げていくリチャード三世を、古田新太は巧みな話術やふとした瞬間の表情や態度を豹変させ、ダークな雰囲気をかもし出しながら演じていく。そんなリチャードの悪巧みに翻弄される人々の中で、特に際立っていたのは女性たちの存在だ。先王妃マーガレット(銀粉蝶)は激しいのろいの言葉を全身で語り、リチャードにまんまと言いくるめられてしまうアン王女(安田成美)は悔しさや惨めさを、王妃エリザベス(久世星佳)は母の苦悩としたたかな女心を、それぞれ見事に表現していた。

第二部では、ついに王冠を手にしたリチャード三世が、意のままにならない者はたとえ腹心であろうと切り捨て、次第に孤立を深めていく。しかし、彼は夜な夜な自らが手にかけてきた人々の亡霊に怯えるようになる……。リチャードだけでなく彼を取り巻く人々の欲望、恨み、憎しみ、裏切りなど、人間のダークな面を徹底的に見せられたところで、ついにスタンリー卿(榎木孝明)率いるリッチモンド伯(川久保拓司)らが立ち上がる。白を基調とした衣裳で登場したリッチモンド伯の姿は、一縷の希望だ。闇が暗ければ暗いほど、光はその明るさを際立たせるが、リッチモンド伯の登場は、古田リチャードの極悪人ぶりにより大いに輝く存在となっていた。

戦闘シーンや状況の伝達に映像を巧みに利用し、ド派手な照明と音響を用いた演出は、まさに“いのうえワールド”の真骨頂。スピーディでわかりやすくておもしろい、古田版「リチャード三世」は、極悪人だけど妙に惹かれるフシギな魅力に溢れるダークヒーローだ。

公演は、2月1日(日)まで東京・赤坂ACTシアターにて。なお、当日券をチケットぴあにて受付中。

取材・文:松原正美

チケットぴあ

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