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昨年開催された北京オリンピックと並ぶ巨大プロジェクトとして、中国が国家を挙げて取り組んでいる“三峡ダム建設”。今年完成が予定されているこのプロジェクトは、世界最大の水力発電ダムができるという一方で、揚子江下流域で暮らしていた一般市民140万人以上が移住を余儀なくされた。中国のフォン・イェン監督が手がけた映画『長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語』は、その水没エリアで立ち退きを迫られる農家の女性・ビンアイを追ったドキュメント。7年に渡り、彼女の姿を追った本作が、7日(土)より公開されている。
フォン監督は、彼女との出会いをこう語っている。「私とビンアイの出会いは前作『長江の夢』の取材時。ほかの住人が補償金をもらって次々に転居していく中、彼女はこの土地にこだわり、早期移住させようとする役人の圧力と対立した。何事にも屈しない自我の強い女性だから、村ではちょっと浮いていて(笑)。外から来た私に悩みを打ち明けるようになったの。そのうちに、夢やこれまでの人生を語ってくれるようになって。取材を続ける中でこの作品が生まれました」。
長江のほとりでの静かな暮らしを突如切り裂いた理不尽な移住命令。育ち盛りの2人の子供を抱え、夫も病弱な彼女は、今の幸せな生活を守ろうと奮闘する。そうして日々が流れる中で、カメラは彼女の顔の7年の間の変化を映し出す。実直に生きた彼女の顔はとても美しい。「撮影時は無我夢中なので気づかなかったのですが、編集で見たとき、私も彼女の顔の変わりようにびっくりしました。確かに年をとっているのだけれど(笑)、彼女の顔は私もとても美しいと思います」。
そのビンアイとの関係は、実はいまも継続中という。「彼女と出会えたことは、何ものにもかえられない宝物になりました。今は無二の親友で、何でも言い合える女友達です」。
作品は山形国際ドキュメンタリー映画祭をはじめ、世界各国の映画祭で数々の賞を受賞。監督は「過大評価」と謙遜するが、彼女の視点が映し出すのは、ひとりの女性の生き様と歴史であり、中国社会の変貌でもあり、家族の有りようでもあり、と実に奥深い。小川プロダクションの作品を見てドキュメントの世界を知ったというフォン監督。新進女性映像作家のその確かな才能に注目だ。
取材・文:水上賢治
『長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語』
ユーロスペースにて公開中
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