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宮本亜門の演出による音楽劇「三文オペラ」が5日、東京・シアターコクーンにて開幕した。かつて串田和美(1993年)、蜷川幸雄(2001年)もこの劇場で演出を手がけているこの「三文オペラ」は、日本でも上演機会の多いブレヒトの傑作で、なじみが深い。「誰も見たことのない、東京の『三文オペラ』にしたかった」と宮本が語るように、古典的作品である本作(1928年初演)が、現代の息吹をたっぷり含んだ2009年度版とも言うべき新たな作品に仕上がった。
狂言回しを兼ねる歌手(米良美一)が、これから始まる芝居の主役について歌う。主役は盗賊団のリーダーでジゴロのメッキ(三上博史)だ。メッキと内緒で結婚式を挙げた若い娘・ポリー(安倍なつみ)は、物乞いで金儲けをする自分の両親(デーモン小暮閣下&松田美由紀)に結婚を大反対されるが、彼女は言うことを聞かない。そこで両親は警察を使いメッキ逮捕にやっきになるが、彼の元情婦で娼婦のジェニー(秋山菜津子)の告発が決め手となり、彼は囚われの身となる。しかしそこは色男。恋人の女ふたりが牢獄で鉢合わせ、喧嘩している隙に逃げ出したメッキだが……。
舞台上に敷き詰められた無数のベニヤ板、手すりに巻かれた“CAUTION”の黄色いテープ、舞台天井から吊るされた青いビニールシート。まるで劇場全体がとりあえず雨風をしのぐ仮宿か工事現場といった風情だ。そう、ブレヒトが記した“貧民街”という舞台設定を、宮本は現代のホームレスが暮らすであろう場所に置き換えた。そしてその現代性をより豊かにするのが、パリ・コレ参加のデザイナー・岩谷俊和の衣裳。安物のスーツとビニールシートをガムテープでドッキングさせた物乞い軍団の衣裳や、今どきの“なんちゃって制服”なども登場し、今の上野や新宿、渋谷にある光景と舞台上の話の差異を感じさせない工夫を施している。
また、宮本自らが「(まるで)動物園のよう」と称した個性的すぎるキャスティングも、役柄と見事にマッチした。色香を放つ三上メッキは、自分と関わった女性を平等に愛するが、自らは我を忘れることがない。そんな淡々と物事を受け入れる彼が、死の淵で自暴自棄となって命乞いをするギャップが見ものだ。宮本とは2度目の舞台となる安倍は女優開眼。“現代性”を体現するアイコンとして、今どきの女の子を熱演している。そして、特筆すべきはデーモンと米良。デーモンはエキセントリックな妻子と反作用を成すような引きの演技と絶妙の間合いのセリフ回しで、芝居巧者ぶりを見せつけた。芝居の頭から泥臭く猥雑な低音の歌声で人々の目を釘付けにした米良は、狂言回しとして舞台に出ずっぱり。場面転換ごとに道化を交えたナレーションを入れるため、観客にとっては話の内容もわかりやすく、宮本の掲げる“現代性”に一役買っていた。
この舞台は、東京・シアターコクーンにて、4月29日(水・祝)まで、大阪厚生年金会館ウェルシティ大阪 芸術ホールにて、5月4日(月・祝)から9日(土)まで上演される。
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