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NEWSの加藤成亮が初主演を務める舞台「SEMINAR(セミナー)」が、5月17日、東京グローブ座で幕を開けた。脚本を手がけたのは、「ディファイルド」や「グッドラック、ハリウッド」などでも知られる、リー・カルチェイム。本作が世界初演となる。
現在セミナーハウスとして使用されている、メディチ家ゆかりの邸宅。そこにはグレチェン助教授のもと、6人の学生が美術史のゼミのために集っていた。物語はこの邸宅にある噴水の前で、ローレンという男子学生が意識のない状態で発見されたことから始まる。果たして、彼をこのような状況に追い込んだのは何だったのか。
舞台はイタリア・フィレンツェであるが、そこに広がる光景は、今の日本とさして変わらない。携帯電話やパソコンに依存する若者たち。その裏に垣間見える両親の姿に怯え、自らの主張を失った教師。そんな中で異彩を放つのが、加藤成亮演じるローレンの存在だ。ローレンは彼らを軽蔑し、「アイツらのバカな世界には生きていたくない」と言う。と同時に、さまざまな顔を使い分け、彼らに大きな影響を及ぼしていくのだ。それだけに非常に難易度の高い役と言えるが、加藤成亮は初主演舞台とは思えないほどの堂々たる演技を披露。低く通る声に、人を惹きつける不思議なオーラをまとわせ、ひとりの魅力的な男性像を作り上げた。そんなローレンの世界に引き込まれていったのは、何もセミナーの人々だけではない。いつの間にか観客までもが、ローレンに釘づけになっていく。特にラスト間際で見せる彼の感情の爆発は、誰もが息をのむ圧巻のシーンとなった。
ゼミの学生役を演じたのは、加藤成亮と同世代の若手実力派の面々。ハンナ役の加藤夏希は、抑えた演技の中に女性としての自尊心をにじませ、中村倫也演じるジェイソンからは、陰と陽が交錯する若者の苦悩が痛いほど伝わってくる。また小劇場界でも引っ張りだこの安藤聖が、無邪気なお金持ちのお嬢様・テスを好演。ほかに田畑亜弥と上口耕平が、恋人同士のミッシーとパトリックを演じている。そしてこれら学生をまとめ、作品自体の引き締め役にもなっているのが、グレチェンを演じた賀来千香子。教育者であることと女性であることとの間で心揺れ動く彼女の演技が、若者だけでなく大人にも響くような、多面性のある作品へと昇華させている。
ローレンはこう語る。「生きる目的はいくらでもある」と。それは過酷な時代を生きる、私たちに対して語りかけているようにも思えた。
公演は6月3日(水)まで同所にて。その後6月9日(火)から14日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでも上演される。チケットはともに発売中。
(取材・文:野上瑠美子)
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