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1937年の初演以来、誰でも口ずさめる名曲の数々とキュートなラブストーリーで世界中をハッピーにしてきたロンドン製ミュージカル『ミー&マイガール』。日本でも宝塚歌劇団での大ヒットをはじめ、たびたび上演されてきた本作が、東宝ミュージカルとしては3年ぶりに、6月3日、東京・帝国劇場で初日の幕を開けた。
舞台は1930年代後半のロンドン。当主が亡くなったばかりのヘアフォード伯爵家は、かつて先代が許されない結婚をしていた時に生まれたという忘れ形見を迎える。ところが屋敷に現れたのは、下町ランベスからやってきたビル(井上芳雄)。下町言葉を連発するビルに、公爵夫人マリア(涼風真世)は頭を抱えながらも貴族教育を施すことに。ところがビルは、同じ下町暮らしの恋人サリー(笹本玲奈)と結婚すると宣言。ビルが相続する財産目当てで結婚を迫るジャッキー(貴城けい)や、マリアの友人ジョン卿(草刈正雄)らが見守るなか、サリーはビルのために身を引く決心をするが…。
開演時間の直前、ロビーから音楽が聞こえ、なんとオーケストラの面々が客席へと乱入。そのままオケピに座ってチューニングを始めると、“踊る”名物指揮者・塩田明弘がトークで盛り上げ、一気に場内はヒートアップ。本作のもうひとつの主役が音楽であることがよくわかる仕掛けだ。こんな肩の力が抜けたオープニングも、“ミーマイ”ならではのお楽しみ。
山田和也の演出と、井上、笹本、涼風らメインキャストは3年前と同じ。だが、いささか硬さが感じられた前回とは異なり、初日から伸び伸びと楽しみながら演じている空気が伝わってきた。ビルは下町育ちらしい言葉遊びの連打と、常に手先で何か(帽子やマントなど)をもてあそびつつ、サリーへの愛も語らなければならない難役。井上はここ数年コメディやTVドラマなどにも出演して演技の幅を広げており、その経験がまさに吉と出た。一方の笹本もおきゃんな物言いと、ソロナンバー「もしもハートをとられたら」などでのまろやかな歌声の両方で魅了。両者共に、役者としての3年の積み重ねを感じさせた。
また、気品と美しさ、貴族育ちの大らかさを垣間見せるマリア役の涼風、貴族の品格に少し崩れた風情がまさにジョン卿といった草刈、ビルを追い掛け回すがチャーミングで憎めないジャッキーの貴城と、適材適所のキャスティングも嬉しい。その他のキャスト、アンサンブルもよくまとまり、パワーがビシビシと伝わってくる。
最高の作品は、やっぱり最高のキャストとスタッフで観たい。そんな願望がしっかりと叶えられる、ぜいたくな舞台である。
公演は6月28日(日)まで帝国劇場にて行われ、7月4日(土)から15日(水)まで名古屋・中日劇場でも上演される。
(取材・文:佐藤さくら)
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