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劇団扉座が2004年に上演し、絶賛された『新浄瑠璃 百鬼丸〜手塚治虫「どろろ」より〜』。この作品が手塚治虫の生誕80周年に際し、5年ぶりに再演が決定、6月25日、札幌・道新ホールで開幕した。
主宰・横内謙介は、ほかにも『リボンの騎士』や『陽だまりの樹』などの手塚治虫作品を舞台化しており、その手腕に評価が高い。この作品で歌舞伎義太夫の寵児・竹本葵太夫の協力を得て、人気怪奇マンガを浄瑠璃という神話的な語り物に組み直した横内は、今回の再演で自ら改訂を加え、「新浄瑠璃」という舞台の新たな可能性を追求。満席の観客たちからも鳴り止まない拍手が贈られた。
時の戦国武将・醍醐景光(有馬自由)が天下を取るために、これから生まれてくる我が子の肉体の48箇所を魔物たちに与えると妖怪・白眼童子(岡森諦)に約束する。景光からその赤子・百鬼丸(声・高橋麻理/影・累央)を殺すように指示された家臣の梶之助(犬飼淳治)は、景光の妻・阿佐比(平栗あつみ)に懇願されて、百鬼丸を殺さずに川に流すことに。盗っ人の男・どろろ(山中崇史)に救われた百鬼丸は、奪われた肉体を取り戻して母の元に帰るために、どろろを供にして魔物を倒す旅に出るのだが……。
客演の平栗を始めとして、主要な登場人物はほぼ初演から続投。奥深い人物造詣で、さすがの充実ぶりをみせる。中でも3年ぶりに劇団公演に出演した山中は、テレビドラマ『相棒』など外部での活躍を確実に力に変えているのか、のびのびとどろろ役を好演。頼もしいほどの成長振りだ。百鬼丸と行動を共にするうちに心を取り戻していくどろろが語るセリフの一つ一つが胸を打つ。
また、百鬼丸を「声」と「影」のふたりの黒衣で表現するなど、初演でも評価された横内の演出にもさらに磨きがかかり、「手塚ワールド」とも言うべき原作の持つ壮大な世界観を余すことなく鮮烈に描き出した。さらに音響効果として舞台上で役者が持ち回りで楽器の演奏を行い、物語の中盤では「浄瑠璃コロス」とも言うべき義太夫節を活かした合唱はライブ感を生み出す。主人公や登場人物たちの悲劇的な情感がいっそうこめられて、観客の心を揺さぶっていた。
公演はこの後、7月4日(土)・5日(日)に神奈川・厚木市文化会館 小ホール、7月8日(水)から12日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアターにて上演される。チケットは発売中。
取材・文:本田裕一郎
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