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演劇集団キャラメルボックスのサマーツアー公演『風を継ぐ者』が、7月11日、東京・サンシャイン劇場にて開幕した。ファンの間でも人気の高い幕末青春群像劇で、1996年に初演、2001年の再演を経て、今回が8年ぶり3度目の上演だ。
ファンタジーの印象が強いキャラメルボックスだが、もうひとつの柱は“幕末劇”。その中でも圧倒的な支持を得ているのが、幕末期の動乱を駆け抜けた新選組を描く本作だ。土方歳三や沖田総司らも登場するが、メインとなるのは架空の人物である平隊士たち。剣術も学問もまるでダメ、足が速いことがとりえの立川迅助と、学も剣の腕もあるが、何か熱中できることを探している小金井兵庫。新選組に入隊したふたりが、正義と正義がぶつかる戦いの中で、必死に生きた軌跡が紡がれていく。
初演、再演では、物語のメインキャラクターに劇団の中核を担う俳優を配していたが、今回は若手を中心に据える思い切ったキャスティング。主役の迅助は入団7年目の左東広之が演じる。真面目かつ純朴そうな風貌が役柄にぴったりで、全力でこの役にぶつかっている左東のひたむきさが、そのまま迅助のひたむきさにシンクロする。沖田役の畑中智行もキレのある動きと明るい笑顔が魅力的。土方役の三浦剛、三鷹銀太夫役の阿部丈二らも好演。それぞれ、役柄に役者自身の魅力がにじみ出ており好感が持てる。そして狂言回し的役回りでもある小金井を任されたベテラン大内厚雄が、しっかりと物語を支えながらも、傍観者的冷静さの中に若手に負けない熱を時折噴出させるのも面白い。
劇中では、池田屋騒動や蛤御門の変といった有名な事件も語られるが、物語のクライマックスとなるのは、新選組と長州藩士がぶつかる、ある争いだ。信念と私情が絡まり起こるそれは、歴史には残されていない小さな事件。だがどちら側にも正義が確かにあり、彼らは命をかけて戦う。けして格好よくはないが、悩みもがきながら戦うその姿から立ちのぼるのはまぎれもない“生”の輝きだ。その羨ましいほどにひたむきな“生”は観る者の胸を熱くする。フレッシュなキャストによる小手先ではない体当たりの熱演が、そのひたむきさをリアルなものにした。思い半ばで命を落とした人、成就しなかった恋など、彼らのままならぬ青春が切なく胸に突き刺さるが、終わってみれば、なぜか底抜けに楽しそうな笑顔が心に残る。爽やかな風が舞台から客席に届いた。
なお本作は今年で結成24周年を迎えるキャラメルボックスの、100本目の公演となる。節目の公演での若手陣の熱演は心強く、俳優の層の厚さが感じられ、劇団のこれからの活動にも期待が募る。公演は8月9日(日)まで同所にて。その後、8月14日(金)から16日(日)に愛知・名鉄ホール、8月20日(木)から25日(火)に大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA! でも上演される。
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