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ロンドンで1983年に幕を開けて以来、現在まで25年間ロングランを続けている名作ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』。現代社会を映し出すストーリーと、ドラマチックな楽曲の数々でローレンス・オリヴィエ賞作品賞を受賞している本作の日本版が8月7日、シアタークリエでついに開幕を迎える。初日に先駆け、同6日には公開舞台稽古が行われた。
舞台は英国の港町リヴァプール。子だくさんのミセス・ジョンストン(金志賢/TSUKASA)に双子が生まれ、裕福だが子どものないミセス・ライオンズ(久世星佳)はそのひとりを引き取ることに。ジョンストン家に残されたマイケル(通称ミッキー・武田真治/藤岡正明)と、ライオンズ家のエドワード(通称エディ・岡田浩暉/田代万里生)は、互いの存在を知らずに育つ。だが7歳の時、偶然出会ったエディとミッキーは意気投合し、義兄弟の契りを結ぶ。物語はナレーター(下村尊則)が見守るなか、次第に不穏な影を帯び始め…。
公開舞台稽古ではWキャストのうち、ミッキーを武田真治、エディを岡田浩暉、そしてミセス・ジョンストンを金志賢が演じた。武田と岡田は1幕で子ども時代を演じるが、武田は登場した一瞬、誰だか分からないほどメイク・動作共に徹底した役づくり。岡田は端正なお坊ちゃま姿で最初は戸惑うが、ミッキーとの別れの場面など、観ているうちに引き込まれる。ここでふたりが子ども時代を演じきることで、後半、大人になってからの悲劇が鮮やかに浮かび上がる仕掛けだ。
ほかにふたりのガールフレンドで、キーパーソンとなるリンダには鈴木亜美。生き生きとした存在感で、彼女を巡る双子の悲劇に説得力が増し、持ち前の弾ける笑顔に、リンダの感情を丁寧に乗せ魅了した。ミセス・ジョンストンの金と、ミセス・ライオンズの久世との対立は見応え充分。狂言回し的な役どころのナレーター・下村は、劇団四季を退団後、これが初の舞台出演。登場しただけで空気が変わり、さすがといったところ。またミッキーの兄・サミー役の伊藤明賢は、負傷で降板した住谷正樹の代役で登場。早くも舞台を引き締めているのが頼もしかった。
リヴァプールといえば、古い産業都市。だが1950年代からは英国の斜陽と共に次第にスラム化、1970年代には町の再建計画が推し進められた。そういった時代背景が投影されている作品なだけに、妻子を抱えながらリストラされ、鬱病になるマイケルの姿は今の日本にもリアルに重なるはず。同時に、映画音楽を思わせるエモーショナルな楽曲の数々は、ミュージカルならではの楽しさである。英国人演出家グレン・ウォルフォードのリアルさと寓話性との絶妙なバランスが巧みで、気付けば衝撃のラストまであっという間だった。
公演は9月27日(日)まで東京・シアタークリエにて上演。
(取材・文:佐藤さくら)
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