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演 劇

昨年、鴻上尚史が若手の役者たちと共に旗揚げして話題を呼んだ、虚構の劇団。準備公演を含めて4作目となる今回は、鴻上の第三舞台時代の“伝説”となっている『ハッシャ・バイ』を上演。18年ぶりの再演とあって注目を集める舞台が、8月7日、座・高円寺1で幕を開けた。
舞台はガランとした空間のなか、病院のベッドに横たわる“母”と、それを見つめる“息子”の姿から始まる。息子=カネダ(山崎雄介)は私立探偵。ある日、彼のもとに毎晩同じ砂浜の夢を見るという女(大久保綾乃)がやってくる。夢の中で「助けて」という声を聞いた女は、そこに集う人々が誰なのかを突き止めたいというのだ。ふたりは毎夜繰り返される女の夢を検証するうち、いつしか夢と現実のはざまに踏み込んでしまい…。
謎を巡って疾走する言葉の応酬と、所々で挿入されるギャグやダンスが鴻上作品の真骨頂。それも代表作の再演とあって、最初は硬さが感じられた役者たちも、物語が進むにつれて徐々に個性を発揮。幕開きと結末でこんなにのびしろが見られるのも、伸び盛りの役者で結成された劇団ならではだろう。特に、カネダ役の山崎はSFというフィクションに説得力を持たせる存在感がある。カネダに協力する超心理学者・ナリタ役の渡辺芳博も、テンポのいい芝居とギャグで客席を沸かせた。さまざまな夢でキーパーソンを担う小野川晶の瑞々しさ、夢の中で“母”を演じた小沢道成のあやういたたずまいも印象に残った。
本戯曲の初演は1986年とあって、中には初演以降に生まれたキャストもいるとか。当然のことながら、第三舞台を代表とする80、90年代の演劇ブームは知らない世代。そんな若手たちが、本作を体現したらどういうものが出てくるか。そして初演の頃を知っている層と、知らない層とが混じりあう客席の反応はどうか。そのリアクションを23年後の今、ナマで感じることができるのも、演劇がもつ楽しさだろう。
物語は母親と子どもの関係を暗示しながら、“夢”と“虚構”を対峙させて幕を閉じる。若いキャストたちが汗と息で綴る、休憩なしの2時間。この戯曲が今も持ち続ける特質を、充分に堪能させる時間となった。
公演は8月23日(日)まで、座・高円寺1(東京)にて上演。チケットは現在発売中。
(取材・文:佐藤さくら)
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