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演劇集団キャラメルボックス2009オータムツアー「さよならノーチラス号」が27日夜、新宿・紀伊國屋サザンシアターで開幕した。本作は脚本・演出の成井豊の実体験を基に描かれ、1998年に初演。ファンの間でも再演要望の高い人気作だったが、成井自身の思い入れが強いゆえになかなか実現せず、このたび11年ぶりの再演となる。この日は待ちわびたファンがキャンセル待ちのチケットを求めて長蛇の列を作り、大盛況の初日となった。
物語は、新人作家・星野タケシの引越の日に始まる。手伝いに来た担当編集がブリキの潜水艦を見つけ、次回作のネタになるかもしれないとそれにまつわる話をせがむ。タケシは15年前、12歳の夏休みの出来事を語り始める……。
忘れがたい少年の日の思い出、ましてやファンタジックで心温まる作風で知られるキャラメルボックスとくれば、明るく爽快感に満ちた作品を想像するかもしれないが、後味は意外に切なくほろ苦い。タケシの家族は事業に失敗して夜逃げをし、タケシのみ親戚の家に預けられているという設定。またタケシとその兄(成井自身がモデル)、父と兄、タケシの兄貴分である勇也とその兄など、肉親同士ゆえに生まれる葛藤も描かれる。そしてタケシ自身も、“自由”を強く求めるあまりにある過ちを犯してしまう。大人になって、一歩引いた視線で見れば誰しも気づく、自分の愚かしさや幼稚さ。また、それゆえの何とも言えない愛おしさ。この物語が持つある種キャラメルらしからぬ“生々しさ”は、成井が「最愛の作品」と言い切りながらもなかなか再演に踏み切れなかった理由のひとつであるだろう。だが「さよならノーチラス号」で描かれる過去は、けしてタケシ一家やその周辺の人々だけのものではない。今の自分は“過去から脈々とつながる自分であること”でありつつ、今の自分はまぎれもない“今の自分”であるということ――タケシ少年の成長譚を通じて観客にもたらされる明日への希望や勇気は、やはりキャラメルボックスならではの味だ。
初主演でタケシ役に抜擢された多田直人は、初々しい魅力を発揮。回を重ねるにつれての成長も楽しみだ。クロムモリブデンから参加のゲスト・森下亮と久保貫太郎もスパイス的役割を果たし、印象に残った。
公演は9月13日(日)まで同所にて。その後、9月17日(木)から20日(日)まで、梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて大阪公演が行われる。チケットはともに発売中。
(取材・文:武田吏都)
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