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2007年の初演時に大好評を博した、演劇集団キャラメルボックスの人気作『トリツカレ男』(原作:いしいしんじ『トリツカレ男』<新潮文庫刊>)が、2月16日、東京・赤坂ACTシアターにて再演の幕を開けた。
イタリアの片田舎で、レストランのウエイターとして働くジュゼッペ。彼は何かひとつのものにハマると、その何かにとことん“トリツカレ”てしまうことから、周囲からは「トリツカレ男」と呼ばれていた。これまでに彼を魅了してきたのは、オペラに探偵、昆虫採集に外国語と、ジャンルはさまざま。三段跳びに至っては、なんと世界記録をも打ち出してしまったほどだ。そんな彼の前に、ひとりの少女・ペチカが現れる。母親の病気療養のためロシアからやって来たペチカに、一瞬にして心奪われてしまったジュゼッペ。“恋”にトリツカレたジュゼッペは、相棒であるネズミのトトと共に、ペチカを幸せにすべく奔走するのだが……。
楽しくて、切なくて、そして心あたたまる、これぞ演劇集団キャラメルボックスといった作品。劇中、キャラメルボックスが得意とするダンスシーンに、陽気なイタリアを象徴するようなパフォーマンスなどが織り込まれ、観ているだけでワクワクするような、エンタテインメント性が高い作品に仕上がっている。
主人公のジュゼッペを演じたのは、初演に引き続き劇団員の畑中智行。真っすぐに突き進む愛すべき青年役を、高い身体能力と豊かな感情表現により好演した。ヒロインのペチカ役には、キャラメル初参加となる星野真里。見た目のかわいらしさはもちろん、ペチカの複雑な心情を要所、要所ににじませ、観客の心をグッとつかむ愛らしいヒロイン像を作り上げた。ネズミのトト役には、こちらもキャラメル初参加となる金子貴俊。元々金子が備えているキュートなキャラクター性が、トトという役柄と見事にマッチ、その存在をしっかりとアピールして見せた。
また観客の大きな笑いを誘っていたのは、インコのニーナ役の渡邊安理とギャングのボス・ロミオ役の阿部丈二。セリフの間やトーン、予測不可能な動きに加え、衣裳の派手さも目を引く。そんなふたりの演技は時に過剰とも思えるのだが、本作には不思議とピタリとハマり、逆に大きな魅力へと繋がっていた。
脚本・演出の成井豊が、本作のテーマとして掲げるのは「人を好きになるということ」。その願いは、観客の心に確実に届いているはずだ。公演は同所にて2月29日(水)まで開催。その後、名古屋、大阪を回る。チケットは発売中。
文:野上瑠美子
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