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複雑な心の機微を静かに丹念に描く劇作家・岩松了とヤクザものという意外な組み合わせ、さらに毎回、豪華キャストが話題を集める『シダの群れ』シリーズ。第一弾(2010年)、第二弾『純情巡礼編』(2012年)に続く第三弾『港の女歌手編』も、阿部サダヲ、小泉今日子、吹越満、小林薫ら錚々たる顔ぶれが揃う。第一弾に続き、ヤクザの森本役で主演する阿部サダヲに話を聞いた。
出演していなかった前作(第二弾)を客席で観ていた阿部は「台詞でちょっと“森本”って名前が出てきたのでうれしかった。まだいることがわかったんで、また出られる機会があるのかもしれないって思いながら観ていました」と言う。作者の岩松の中には、本シリーズ全体で「森本の成長物語を描きたい」という構想がある。第一弾では一介のチンピラだった森本。組長の片腕だった男を撃ち、行方をくらましていた彼が、ある港町に流れ着くところから第三弾は始まる。
「台本が全部上がっていないので、岩松さんのいう森本の“成長”がどういうものかはまだわからない。ただ第一弾のときは全部が全部、人を見て動く、ヤクザにはなれなさそうな人間だった森本が、今回ヤクザの世界にどっぷり浸かっているのかどうなのか。ただ、森本が一番お客さんに近いキャラクターなので、お客さんが森本を通して、ヤクザという別世界を覗いているみたいな感覚になるといいかなと思います」
舞台では同じ大人計画の松尾スズキ、宮藤官九郎の演出作品への出演が多く、ふたり以外の演出家との仕事は数えるほどという阿部。岩松はその数少ないひとりだ。「第一弾のとき、初めての岩松さんの台詞や稽古場は楽しかったです。あれほど何回も繰り返して同じシーンをやったりすることがなかったから新鮮だったし。岩松さんの台詞はそうやって体に染みこませていくやり方が一番合ってるんだなと思いましたね。流れがつながっていなくて急にどこかに飛んだりする台詞があるんですけど、何回もしゃべっているうちに、どこにつながっているのかとか、あの人のことをしゃべっているんだなっていうのがわかってくるんですよ」
今回はクラブ歌手・ジーナ役の小泉今日子とともに、生バンドをバックにジャジーな歌も披露する予定とのこと。“港の女歌手編”での森本はどんなドラマを経験し、どこに流れ着くのか。
「どうなるんですかね? 岩松さんまだ台本書いてる最中だから、僕と会って気が変わったりして。「アイツ殺しちゃおうか」ってことになってるかもしれないし(笑)。でもそのどうなるかわからないところがシリーズものの面白さですよね」
公演は11月6日(水)から11月30日(土)まで東京・シアターコクーン、12月6日(金)から12月15日(日)まで大阪・シアターBRAVA!、12月21日(土)から12月23日(月・祝)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホールにて。
取材・文:武田吏都
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