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「俺は何者にもならない」
大和の大王の長男・海里(瀬戸康史)は、親友で舎人の出雲(荒井敦史)に言い切る。長男として王となる定めに逆らい、自由を求め、ゆえに差し出された、幼なじみの陽向(小芝風花)の手を取らなかった……それが、崩壊の始まりとは知らずに。
10月22日(木)に幕を開けたのは、2007年から続くDステこと俳優集団D-BOYSによる演劇ユニットの第17回公演『夕陽伝』だ。今年、デビュー10周年の瀬戸康史を主演に、Dステ12th『TRUMP』を手がけた末満健一が脚本を書きおろし、つかこうへい作品を始めD-BOYSの出演作も手がける岡本俊一が演出する本作。そこで描かれたのは切なくも狂おしい、己の想いに翻弄される兄弟の愛憎劇だった。
最愛の妻が異形の子を産み落とし、世を去ってから大和の豪族の長・凪大王(山本亨)は病んでいた。やがて摂政の猿美弥(遠藤雄弥)は周辺諸国の脅威から大和王権を守るため、蛮族として悪名高い熊曾の第14王子・真多羅(鈴木裕樹)と愛娘・陽向との政略結婚を企てる。父を思い、一度は受け入れた陽向だが、ついに心のまま叫ぶ。
「わたしを連れて逃げてくれる?」
しかし、その手は虚しく空を舞う。実は誰よりもその手を取りたかったのは、海里の弟・都月(宮崎秋人)だった。願いむなしく婚礼は血濡れて終わり、憤る弟に「誰かの手を取るということは、その人にとっての誰かになるということだ」とうそぶく兄。やがて暗い思いを抱く弟。
不義の子として父に顧みられることなく育った真多羅もまた、兄たちを憎み王の座に執着する。その真多羅を傀儡とする卑流古(池岡亮介)は異形ゆえに捨てられた己を呪い、国滅ぼしに執着する。農民の生まれで貧しい富士丸(前山剛久)と陸奥(高橋龍輝)の兄弟は愚直にただ生きることに執着する──。
真多羅の破綻っぷり、卑流古の壊れっぷりはまさに怪演。座長としてその真ん中に立つ海里は凛としてまぶしい。その海里に「逃げるな!」と、揺らがない出雲。陽向を思い狂気に囚われていく都月……改めてD-BOYSの層の厚さと、まさに俳優集団だという事実に心奮える。苛烈なだけでなく笑いも盛り込まれ、真多羅とその手下によるガチの日替わり懺悔コーナーや底抜けにお馬鹿な陸奥のキレッキレなダンス、富士丸と陸奥兄弟による愉快な前説も必見だ。
陽向の名前の先にあるのは明日──彼らが紡ぐ、大和国の物語は11月1日(日)まで東京・サンシャイン劇場、11月21日(土)・22日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。
取材・文:おーちようこ
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