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アイルランドの劇作家マーティン・マクドナーのブラックコメディの秀作「イニシュマン島のビリー」が3月25日(金)より上演される。日本では過去に『夢の島イニシュマン』『ビリーとヘレン』などの邦題で上演。映画『ハリー・ポッター』シリーズでお馴染みのダニエル・ラドクリフがブロードウェイで主演したことでも話題になった作品だ。今回は若手実力派演出家の森新太郎による新演出で、注目の若手俳優・古川雄輝を始め、鈴木杏、柄本時生、山西惇、江波杏子ら実力派キャストにより新たな息吹をもたらす。都内某スタジオで行われた、本作の通し稽古に潜入した。
開幕まで半月に迫ったこの日は、初めての通し稽古が行われていた。緊張感が漂う中、本番の流れ通りに進行し、出演者たちは個性的なキャラクターを活き活きと演じていた。アイルランドの孤島が舞台のこの作品は、ハンディキャップを負った孤児ビリーと彼を取り巻く人々の物語。ひどい言葉で罵られながら生きてきたビリーのもとに、ゴシップ屋のジョニーパティーンマイクが隣の島でハリウッド映画の撮影が行われることをもたらす。島を出るチャンスとみたビリーは、幼馴染の少女ヘレンとその弟バートリーとともに映画に出演するためにボートで海を渡ろうとする。
左手と左足が不自由で、誰からも人として認められないビリーを、古川はリアルに演じる。いまにも消えてしまいそうな気弱なビリーは儚げで、少しずつ変わろうとする姿は生命力を感じられた。作品全体に漂うどこかどんよりとした重い空気を、一変させるのは個性的なキャラクターたち。荒々しく暴力的な少女ヘレンを演じる鈴木がシーンに緊張感を与え、おバカな弟を演じる柄本が絶妙な間合いで、せりふの度に場をなごませていた。山西が演じるジョニーパティーンマイクの存在感にも目が離せなかった。
台詞の中には人を傷つけるような過激な言葉も多く、ドキリとするような暴力的なシーンもある。安心と不安定、優しさと暴力など、相反するものが次々と展開し、希望の光が見えたと思えば、絶望がその光を覆い隠す。しかし、観終ったあとには、そんな表裏一体の物語をもう一度始めから観たくなる。通し稽古のあとにはスタッフとともに細かな調整も行われていて、本番に向けてさらに磨きが掛かっていくのだろう。舞台セットもまだ装飾される前で、どんな世界に仕上がるのか楽しみだ。
「イニシュマン島のビリー」は3月25日(金)から4月10日(日)まで世田谷パブリックシアター、4月23日(土)・24日(日)に梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演。チケット発売中。
文:門 宏
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