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演 劇
SF映画の原点にして頂点と言われる作品を原作として作られる舞台『メトロポリス』。佳境に入った稽古場を訪ね、キャストの松たか子、森山未來、演出・美術を手がける串田和美に話を聞いた。90年前の映画が描いた100年後は、今どう表現されるのか。稽古場からは、想像し創造する演劇の豊かさが感じられた。
描かれるのは未来都市メトロポリス。支配者階級と労働者階級に二極化した世界で、支配者の息子フレーダー(森山)と労働者階級の娘マリア(松)が出会い惹かれ合う。やがて、ふたりの交流に危機感を抱いた支配者が、マリアに似せたアンドロイドを作り、労働者たちのもとへ送り込むのだが──というのがとりあえずのあらすじである。が、この舞台で見せようとしているのは話ではないようだ。何しろ冒頭のシーンから、キャスト全員でダンスとは言い切れない不思議なパフォーマンスを見せていく。山田うんの振付で、それぞれが、歩いたり、転がったり、つながったり、人に登ったり。全員で作り出す複雑で意味ありげな動きにただただ見入るばかりである。
その舞台ならではの表現について森山は言う。「映画の摩天楼の壮観さとか労働者の数とかをそのまま舞台で見せるのは不可能。じゃあ、ひとりでも群衆を感じさせるとか、舞台上と客席がお互いに想像力を広げられる描写はどうしたらできるのか。それを模索をしている状態なんです」。松もその模索を楽しんでいる。「(森山)未來をはじめ、身体能力という具体的に優れたものを見せてくれる人たちもいれば、どんなことでも何とかするぞっていう頼もしい先輩たちもいて、それぞれがとことん掘っていくのを見ているだけでも面白いんです。そしていつか“これだ”っていう瞬間がくるのを楽しみにしています」。
演出の串田自身、どこに辿り着くかまだ見えていない。いや、あえて決めていないのだ。「自分も含めてですけど、演劇ってもっと可能性があるのにここまでしかやれていないっていつも思うんです。だから今回も、限りない表現を探してます。たとえば、言葉と歌の間にあるものとか、もっと突き抜けた先にあるものを。そうして、“これって何だろう”と楽しんでもらえるものを表現できたらというのが、僕の望みなんです」。まさに見たことのないものが、舞台の上で繰り広げられることだろう。最後に「そこで人が何かやってるのを目撃するっていう面白さが舞台にはあると思うので、別にお芝居が大好きじゃなくても、観に来てもらえたらなと思います」と松。本来の観る楽しさが堪能できるに違いない。
公演は11月7日(月)より東京・シアターコクーンにて開幕。チケットは発売中。
取材・文:大内弓子
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