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江戸から明治へと変わる文明開化の時代に、歌舞伎に対して新しい時代の演劇として誕生した新派。古き良き時代の日本の情緒、風情、日本語の持つ美しさなどを大切に、明治、大正、昭和、平成と、古典の継承と新作の上演を旗印に脈々と活動を続けてきた。今年は新派創始130年。その記念の年に、映画やテレビドラマなどで有名な横溝正史原作の小説「犬神家の一族」が劇団新派に登場する。戦後間もない頃、信州の財閥を舞台に遺産相続を巡って繰り広げられる骨肉の争い。次々と起こる殺人の中、過去と現在に張り巡らされた謎に、名探偵・金田一耕助が挑む。公演に当たり、現代の新派を支える顔ぶれが勢ぞろいし、新派への想い、新作への意気込みを語った、決意と期待のこもった取材会より。
水谷八重子、波乃久里子らが率いる劇団新派に、歌舞伎界から2016年に喜多村緑郎、翌年に河合雪之丞らが入団。新たな役者を得て、これまでに齋藤雅文の脚色・演出で江戸川乱歩の『黒蜥蜴』『怪人二十面相』を上演した。今回の『犬神家の一族』は原作に忠実に、人間を掘り下げて描く新派オリジナル。ただ、原作にはないが映画で印象的な白いマスクは登場する。また、ゲストとして橘警察署長に佐藤B作、そしてジャニーズの浜中文一は新派初参加で、松子の息子・佐清(すけきよ)と謎多き青沼静馬の二役に挑む。
犬神家の長女・松子役には波乃。「この作品は、天から新派に授けられた作品としか思えない。私は映画の高峰三枝子さんの印象が強くて、美しいお顔を真似たかったんですが、無理(笑)。美から入るのではなく、もっと深い人間性を出せたら」。金田一耕助を演じるために髪を伸ばしていると言う喜多村は「子どもの頃からミステリー小説の探偵もののファンでした。今、新派に来たのは自分の人生にとって必然だったのではないかと思っています。『犬神家の一族』に新しい息吹を吹き込み、素晴らしい群像劇に仕上げたい。今回の公演を未来への新派のスタートに」。犬神家の三女・梅子には河合。「女方として、作品のスパイスにならなければと思っています。時代背景もお芝居の風情も、まさに新派のためにあるような作品。130年後も上演されているような作品に」。
そして、水谷は琴の師匠・宮川香琴を演じ、物語の鍵を握る。「犬神家の被害者のような香琴。映画ではワンカット出ているかどうかなので、最後に印象に残れるように。この新派130年という年に生まれた、新派エンターテインメントという新しい路線を大事にしていきたいと思っております」。
公演は11月1日(木)から10日(土)まで大阪松竹座、14日(水)から25日(日)まで新橋演舞場にて。チケットは発売中。
取材・文:高橋晴代
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