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2017年第86回日本音楽コンクールを制した若きピアニスト吉見友貴(ゆうき)。2000年生まれの彼が、十代の集大成ともいえるリサイタルを開く(11月24日(日)・トッパンホール)。
現時点で決まっている演奏曲は、アルバン・ベルクのソナタOp.1、ベートーヴェンのソナタOp.109、そしてショパンのソナタ第3番Op.58。「最近魅力に気づいた」というのがベートーヴェン。交響曲や弦楽四重奏曲など、ピアノ曲以外も熱心に聴き始めた。「もともと、ベートーヴェンはとっつきにくく感じて、弾くのを避けていました。でも《熱情》を弾く機会があって、初めて深く勉強してみたら、彼の頭の良さ、作曲技法の素晴らしさにびっくり。いい機会だから一気に弾いてしまおうと、今回弾く作品109を含む、後期三大ソナタ(作品109、110、111)に取り組んでいます。最後の傑作3曲を続けて勉強するのは大変ですが、前期・後期とは異なるベートーヴェンの真の世界を深く見ることができたような気がします。もちろん今の年齢で完成できるわけではありませんが、これからもずっと向き合いながら深みを増していきたいと思っているところです」
ベルクはそのベートーヴェンよりも約100年若い世代の作曲家。しかし、「作品のイデーは通じる」と言い切る。「並べて聞いてもまったく違う音楽に聞こえるとは思いますが、根本的な作風は似ているんです。それが伝えられるといいのですけど」
実はベルクを知ったのは、子供の頃に読んだ『のだめカンタービレ』に登場した、ヴァイオリン協奏曲だったのだそう。なるほど、そういう世代だ。「それまでベルクという作曲家を知らなかったのですが、曲を聴いてみて衝撃を受けました。それがきっかけでピアノ・ソナタも勉強して。無調から、ぱっと調性に変わって解決する瞬間がとても好きです。少し難しい曲かもしれませんが、自分の好きな作品をみなさんに知っていただくチャンスにしたいと思います」
そしてやはりピアニストはショパンが大好き。なかでもソナタ第3番は、ずっと憧れの作品だった。「ショパンの全作品の中でも、構築美を最も強く感じます。もちろん感覚的なメロディの美しさもありますが、そのうえで、ソナタとして構造的に美しい、素晴らしい作品なのです」
この春に桐朋学園高校を卒業し、現在は大学のソリスト・ディプロマ・コースで研鑽中。最近はソロだけでなく、室内楽にも積極的に取り組んでいる。「室内楽は人と合わせるので、テンポなど、制限のある中で自由に弾かなければなりません。そのおかげで、ソロを弾くときも自分勝手にならず、作品全体を、より鮮明に、細かく、そして大きくとらえられるようになってきました」
「ピアノでなく音楽を勉強している気がする」と手応えを語る表情は実に頼もしい。成長・進化の真っ只中。今後もさらに大きく羽ばたき続ける彼の「現在」が聴けるリサイタルを聴き逃すな。
取材・文:宮本明
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