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「個性と協調」「ソロとアンサンブル」。一歩間違うと水と油になりそうな要素同士が絶妙にバランスして、独特の魅力を醸し出すのがピアノ三重奏の世界。そこにこの冬、とびっきりの若いトリオが誕生する。戸澤采紀(ヴァイオリン)、西川響貴(ピアノ)、泉優志(チェロ)。今年19歳を迎える3人が、クリスマス・イヴに「トリオ・クレスコ」として産声をあげる(12月24日(火)・浜離宮朝日ホール)。
3人は現在東京芸術大学で学ぶ1年生の仲間同士。さらに、3月まで附属高校時代の3年間も同じ教室で過ごした。カフェでネットを検索して探したという、「成長」の意味のエスペラント語「クレスコ(kresko)」には、これまで3年間の成長と、これからの成長、両方の意味が込められている。
「ピアノ三重奏の魅力は音域の広さ。そして、鍵盤楽器と弦楽器という、異なる種類の楽器が一緒に演奏することで、弦楽器だけのアンサンブルなどとは違う壮大なイメージがあります」(西川)
「そのスケールの大きさを、この3人で、深い音楽で表現できたらと思います。尊敬できる同世代の仲間と一緒に勉強することが憧れだったので楽しみです」(泉)
「単にソリスト3人が集まって弾くのではない、全員が寄り添った時の音が必要だと思います。3人の音。そういう意味でのアンサンブルの醍醐味を、でもお互いに寄せていくのではなく、遠慮なくぶつかり合って作っていきたいです。私たちにしかできない演奏、私たちにしか出せない音が絶対に見つけられると思っています」(戸澤)
デビュー公演には、「今の自分たちにしかできないピュアな音楽を感じてほしい」という彼らの願いに沿って、フレッシュなプログラムを選んだ。メインとなる後半にはドビュッシーとラヴェルのピアノ三重奏曲。
「最初に決めたのがドビュッシー。今の私たちより若い、18歳の作品に親近感を覚えます」(戸澤)
「若いからこそ表現できるものがある作品です」(西川)
ドビュッシーとくればラヴェルだが、その三重奏曲は、このジャンルの最高峰。難度も高い大作に挑む新生トリオに注目だ。一方、前半はピアソラのタンゴ、ロシアのジャズ・クラシックの作曲家カプースチン、そして映画音楽(パイレーツ・オブ・カリビアン)と、多彩なジャンルへの挑戦だ。カプースチンは原曲のフルートをヴァイオリンに置き換えての演奏。お楽しみ的な構成の中にも、他では聴けない彼ららしさがしっかりと織り込まれているのがいい。
3人での公演の1か月前には戸澤のソロ・リサイタルも(11月9日・岡山県立美術館ホール、11月23日(土)・東京・トッパンホール)。2016年の日本音楽コンクール最年少記録優勝者。同じ年のピアノ部門覇者・樋口一朗との「念願の共演」で、こちらも若いエネルギーが溢れる。シューマンの傑作ソナタ第2番や、彼女が連続して取り組んでいるイザイのソナタ第2番、ラヴェル晩年のソナタ第2番など、レンジの広い楽しみなプログラム。
取材・文:宮本明
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