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演 劇
倉持裕が2011年に執筆し、鵜山仁の演出で上演された戯曲『イロアセル』が倉持自身の演出で、フルオーディションによるキャストで新国立劇場にて上演される。10月下旬、稽古場に足を運んだ。
発する言葉に固有の“色”が付いてしまう(=誰が何を話したかがすぐにわかってしまう)人々が暮らす、ある島を舞台に展開する本作。ある日、島の丘に檻が設置され、本土からの囚人が収容されるが、この囚人と話す時だけ、島民たちの言葉に“色”が付かないことが判明。“匿名の言葉”を手に入れたことで島のパワーバランスが変化していくさまが描き出される。
この言葉に付く“色”を舞台上でどう見せるのかが気になるところだが、天井から吊るされた布や照明、スモーク、映像など様々な技術、小道具をシーンごとに使い分けながら、登場人物たちの言葉の色が表現されていくことになるようだ。当然だが、俳優のセリフ、動きに合わせて毎回、スタッフがこれらの色を発出させなくてはならず、倉持から俳優陣だけでなくスタッフ陣に対しても、色の出し方やタイミング、量などについて細かく指示が伝えられる。
こうした島民固有の特性、“ファムスタ”と呼ばれる島民の言葉の色を集め調整する機器、島民が熱狂する“カンチェラ”というスポーツなど、本作ならではの独自の設定や用語が飛び交う本作だが、基本的にはそれらについて、詳しく説明されることはなく、せいぜい外部から来た囚人や看守の間で会話が交わされる程度。これらの特殊な設定をごく当たり前の前提として、島民たちの日常の会話が進んでいくところがおもしろい。
倉持の手によるセリフは、いずれも非常にシンプルであり、それ故にちょっとした言い方の変化で受け取るニュアンスがガラリと変わってしまうのだが、倉持は丁寧に、まさに“色”を付けるようにセリフのニュアンスを決定づけていく。
第一幕の冒頭の町長・ネグロと町会議員・バイツの会話に始まり、業界最大手のファムスタの製造会社社長・ポルポリとその下請け会社を営むグウの会話、カンチェラの選手であるアズルとライのやりとり、そして島民から嫌われているらしい謎の女・ナラ。謎めいた前提の中でも、彼らのちょっとしたやりとりや態度、距離感、彼らの関係性、そして、そこにいない島民のキャラクターまでがハッキリと浮かび上がってくる。そして、第一幕の最後に登場するのが、本土から移送されてきた囚人と彼を見張る看守の発する“異物感”。
謎めいた設定とテンポの良い会話がどのように絡み合い、どこに着地するのか? クスリと笑わせつつ、観る者の心をざわつかせるような物語の完成を期待したい。
「イロアセル」は新国立劇場にて11月11日より上演。
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