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演 劇
7月12日に東京・浅草九劇にてプレビュー公演が開幕したミュージカル『春のめざめ』。同日昼に上演されたゲネプロを鑑賞した。
原作は、19世紀末のドイツを舞台に思春期を迎える少年少女の姿を描いた劇作家フランク・ヴェデキントの戯曲。2006年にはスティーヴン・セイターの台本・歌詞、ダンカン・シークの音楽でミュージカル化(初演:米ブロードウェイ)され、トニー賞8部門を獲得した。日本では2009年に劇団四季が上演したこの作品を、今回は奥山寛の演出によって「WEST」「EAST」の2チーム編成で立ち上げる。
高圧的な教師から受ける詰め込み型の授業に、両親をはじめとする無理解な大人たち。教条主義に凝り固まった社会に抑圧されている14歳の子どもたちは、日々成長する自分の心身に戸惑いながらも異性の存在、特に“性”への好奇心を募らせる。頭脳明晰な主人公メルヒオールは、あらゆる面で同世代より一歩先行く人物と周りから一目置かれていたが──。
取材日は夜のプレビュー公演も含めて「WEST」の面々がステージに立った。メルヒオール役の石川新太は、ヴェントラ(栗原沙也加)への愛と欲望の間で揺れる葛藤をまっすぐに体現。大人たちの性に対するタブー意識が彼を襲った瞬間に始まるロックナンバー「Totally Fucked」で感情を爆発させると、その咆哮に周りの少年少女たちはヘッドバンギングを交えたハードな合唱で応える。
そんな石川メルヒと対照的な人物像を造形していたのが、モーリッツ役の瀧澤翼(円神)だ。事前のインタビュー取材で、石川がWESTに対して「身長が高く声の低いキャストが多く大人びた統一感がある分、若さを出せないか試行錯誤している」と述べていた通り、伸びしろを感じさせる「The Bitch of Living」の歌い出しや幼さを印象づける演技で存在感を残していた。
落伍者や社会規範から逸脱した人物を許さず徹底的に追い詰める19世紀ドイツの風潮は、SNSなどで渦中の人物を執拗に非難する現代の日本と通じるネガティブな普遍性があるだろう。その中で少年少女たちの“性”はどのように覚醒し、春を迎えるのか。ラストに訪れる夏に、彼らは「The Song of Purple Summer」をどんな表情で歌唱するのか──。5人編成バンドの生演奏が後押しする劇世界を、キャストの息遣いが間近に感じられる100席ほどの濃密な空間で体感してみては。
上演時間は、約135分(15分休憩を含む2幕)。公演は7月31日(日)まで。チケット販売中。
取材・文=岡山朋代
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