先日、里見浩太朗が出演する時代劇の舞台「赤と黒 サムライ・魂」の会見を取材し、昔と比べて少なくなっている時代劇への思いを感じました。

今回の会見で里見は、同舞台と時代劇の魅力を「人間はこう生きるべきという気持ちを見ていただきたい。向こう三軒両隣はこうあるべきということが描かれています」とPRしていました。

この言葉の中で「向こう三軒両隣はこうあるべき」は、現代、特にマンションの多い都心ではもう死語になっているかもしれませんが、その言葉で十数年前、里見が主演を務めたTBS系時代劇「水戸黄門」の地方ロケを取材をした時のことを思い出しました。

取材はロケ先の広島や長崎などに出向いて行いましたが、印象に残っているのは、主役の里見も共演者や若いスタッフも、夕食を大きな広間でみんなそろって一緒に食べていたこと。同じ釜のメシを食うと言いますが、大スターであろうが、若いスタッフであろうが、そんなことは関係ないとばかりに、同じメニューの夕飯を仲良く一緒に食べていたのです。

ロケ最後の晩は酒も入り、終盤には里見が歌い、大盛り上がり。一体となっていい作品を作ろうという思いは当然ですが、仕事の担当が何であろうが、どんなポジションの人間であろうが、互いに敬い、優しく接する。それを実践しているように見えました。里見はきっと時代劇は、そうした生き方を教えてくれるものと言いたいのだとも感じました。

人情たっぷりの時代劇がもっと放送されていれば、もしかしたら悲惨な事件や事故が今の世の中から少しは減るかもしれません。【中野由喜】