ついに「神の領域」へ足を踏み入れた。巨人が9日の中日戦(ナゴヤドーム)を5―4で下し、この勝利で原辰徳監督(62)は川上哲治氏が持つ監督通算勝利数の球団記録「1066勝」に並んだ。

 やはり〝神界への扉〟は重かったのか。いつもは勝利後、時には笑いを織り交ぜつつ、報道陣へのリップサービスを欠かさない原監督だが、この日の第一声はこうだった。

「いやいや、苦しいゲームで…いつもなかなか勝負っていうのは簡単にはいきませんね」

 悩める主将・坂本が復活を感じさせる3打席連続アーチを放つも、追いすがる中日に最後まで苦しんだ。連投していたセットアッパーの中川、守護神・デラロサを休ませる措置を取ったこともあり、終盤の投手起用はまさに勝利への執念を感じさせる継投策だった。しかし、そんな勝負の積み重ねが球団最多タイとなる監督通算勝利数「1066」の金字塔を打ち立てた。

 指揮官としての帝王学、そのほとんどを長嶋茂雄終身名誉監督から吸収した。川上氏から「監督とは」といったことを直接学ぶことはなかったそうだが、原監督が現役時代のころから、周囲に「神様」と呼ばれていたほどの〝レジェンド・オブ・レジェンド〟な存在。打撃だけでなく、栄光のV9軍団を率いた監督、その記録に肩を並べた。

 当然、報道陣の質問は記録に及んだ。しかし、過密日程の中、ナインのコンディションをうかがいながら指揮を執っているさなかとあって、指揮官は「まあ、あの…なんていうんだろう。本当にまだ『戦い半ば』という中でね、どういうふうに考えてもなかなか言葉って出てこなくて…」とつぶやくと、こう言葉をつないだ。

「まだまだ『突っ走ってる』っていう、本当にそのことだけですね。感慨に浸るような余裕はないし、その気持ちっていうのは明日も変わらないし…まあ、なんて言うんでしょうね、うーん…シーズンが終わるとね、また違った形で話というか、言葉にできるかもしれないけど、今はまだ本当に突っ走ってる。その中でこういう数字に近づくことができたということですね。本当にそれしかないですね」

 いつもは報道陣からの質問がひと通りし落ち着くと「オーケー?」と尋ねて終える原監督だが、この日ばかりは「以上です」と締めくくった。振り返るのはリーグ連覇、そして日本一を奪回してから。かぶとの緒を締め〝巨将〟は次の1勝へ向かう。