福田沙紀(30)が11日、東京・渋谷のユーロスペースで行われた主演映画「シュシュシュの娘」(入江悠監督、21日公開)のプレミア試写会に登壇した。福田は「自分が俳優としてやっていけるか…俳優としての道を考えた時、たまたま目にした、このオーディションにすがる思いで応募した。(決まった時)夜、手が震えて…泣きましたね」と感慨深げに語った。

映画は、20年にコロナ禍で全国のミニシアターと呼ばれる単館系の映画館が、緊急事態宣言下で休業要請や、客の収容人数に制限がかけられるなどする一方、撮影現場もストップし、多くのスタッフや俳優が路頭に迷い、映画業界全体が苦境に陥った中、入江監督が「だったら、自主映画をやればいい。完成させて全国のミニシアターを回ろう」と一念発起して企画した。「SR サイタマノラッパー」シリーズ以来、10年ぶりとなる自主映画として自ら出資し、賛同したクラウドファンディングの支援金のみで製作。スタッフ・キャストも自らSNSで募集し、出演キャストも、2500人を超える応募の中から3次選考をへて選んだ。

福田自身、20年8月に2004年(平16)から所属したオスカープロモーションから退社し、フリーとなった。「オーディションを受けるために(仕事用の)メールアドレスを作った。所属していた会社を出ることになっていたので、自分のアドレスを作った、その1番のきっかけが今回のオーディションでした」と振り返った。その上で「今後、どう歩いていくかという時に大きな自信があったわけではなかった。(入江監督から)返事が来ると思わなかった。丁寧なやりとりをさせていただいた。自主映画をやらせて頂くのも初めて。1から学びたいという気持ちでした」と入江監督に感謝した。

福田は劇中で、福谷市の外れで暮らす25歳の鴉丸未宇(からすま・みう)を演じた。ひとり身で祖父吾郎(宇野祥平)の介護をしながら市役所に勤めるも孤立し、ただ1人、寄り添ってくれた先輩の間野幸次(井浦新)も理不尽な「文書改ざん」を命じられた末、市役所の屋上から自殺。悲嘆に暮れる中、吾郎から「あだをとるため、改ざん指示のデータを奪え」と命じられ、暗雲立ちこめる市政に一矢報いるため、ひそかに立ち上がる、という役どころだ。

未宇は朝の日課のダンスと、ちくわをつめたお昼の弁当が大好物という設定で、福田は冒頭からリズミカルながら奇妙なダンスを披露する。「ダンスを小さい頃からやっていて、何とも言えないダンスが、出来ないかなと。監督に聞いても『どうぞ』とおっしゃるので…1番、考えました」と苦笑した。

この日の舞台あいさつは、全国24館のミニシアターとリモートでつなぐ、異例の形で行われた。福田は「地元熊本のDenkikanも…全国、つながってくださった。人の前に立つの、いつぶりだろう…グッときましたね。宣伝で、よろしくお願いしますと伝える時、人と出会える。ミニシアターの皆さん、お客さんと会えるのを実感して、グッときました」と感激していた。【村上幸将】