未確認生物の目撃情報は世界各地で報告されているが、なかなかそういった話が出て来ない地域もある。紛争や内戦など政情不安定で、通常の情報も届きにくい地域や、国の体制的になかなか外部へ情報が漏れにくい地域だ。日本の近隣諸国では北朝鮮が該当する。

 北朝鮮と中国の国境付近にある天池と呼ばれる湖に巨大生物が住んでいると言われているが、それ以外の未確認生物の情報はあまり聞こえてこなかった。

 だが、2012年になって驚きの情報が北朝鮮からもたらされた。なんと、北朝鮮の歴史学者が「伝説のユニコーンの隠れ家を発見した」と発表したのだ。

 北朝鮮社会科学院の歴史研究所が発表した報告書によると、考古学者が首都平壌の寺院の外で神話に出てくる「ユニコーン」の隠れ家を発見したという。場所は首都平壌のモランの丘にある龍明寺のすぐ近くで、隠れ家のことを記した石碑があったから分かったのだとか。

 この寺は東明聖王の救済宮殿として使われたもので、彼に付き従っていたユニコーンの世話をするために建てられたものだという。そのため報告書には誇らしげに「高句麗を建国した東明聖王の伝説にも登場する一角獣の隠れ家の発見は、平壌が高句麗だけでなく、古代朝鮮の首都であったことを証明するものである」と述べており、韓国よりも北朝鮮の方が優位であることを誇示する内容となっている。

 こちらの驚くべき一報はイギリスのデーリー・メール紙が報じたものなのだが、誤訳があるという。そもそも飼育されていたものはユニコーンではなく、アジアで瑞獣とされるキリンだったというのだ。高句麗を建国した東明聖王は「馬のようにキリンに乗った」と伝説にあり、今回の発見はその記述を裏付けるものだとして北朝鮮側が発表した、ということらしい。

 当然ながらこの話については懐疑的な視線が向けられている。そもそもこの記事は北朝鮮側も本気で言っているものではなく、中国や韓国の報道内容に対する報復であり、一種の偽装記事ではないかという説もあるのだ。

 なお、ネット上ではこの時寺院の地下から「ユニコーンのミイラ」が見つかったという情報が付け加えられていることが多い。そのミイラは全身が白く、額にはまっすぐ伸びた一本の角があり、体を丸めた状態で横になっているという姿をしている。

 残念ながら、このミイラは現代のアーティストの作品だ。作者はこのミイラを作るために、なんと本物の鹿の胎児を4か月かけて乾燥させ、「ユニコーンのミイラ」に仕立てたものだという。その後、何の因果か回り回って「北朝鮮のユニコーン」だという触れ込みで広まってしまったのだ。どんな情報であっても精査が必要だということだろうか。