【現役医師がぶっちゃけ 女医のお部屋】腰痛に悩む人は多い。その原因は人それぞれだが、ストレッチを行うことで防ぐこともできるという。治療法や痛みを緩和させる方法を外科医の井上留美子先生に教えてもらおう。

 ――腰痛を引き起こす要因は様々だとよく聞きます

 井上医師(以下井上)腰痛の原因として多く挙げられるのが腰部筋筋膜炎です。背骨側の筋肉が硬くなることで痛みを感じるのですが、もも裏の筋肉が硬くて前屈したときに床に手がつかないような人に出やすい症状になります。そのような人は体を正しく使えておらず、腰の筋肉に負担がかかりがちなので腰痛になりやすいのです。普段からストレッチをこまめにすることで腰痛を防ぐことができます。前屈したときに床に手のひらがつくくらいがベストです。また、悩み事などがある場合、不安な気持ちが痛みとなって現れたりすることがあり、精神的なストレスが腰痛の原因になることもあります。リラックスした生活を心がけたり、十分な睡眠を取ることが大事です。

 ――腰痛と一緒に出たら危険な症状は

 井上 しびれや血尿です。急性腰痛(ぎっくり腰)だと思っていたら尿管結石だったというケースもあるので、特に血尿の症状には注意が必要です。もし、血尿が出たら必ず検査をしてください。腰の痛みがあって血尿が出たら尿管結石の可能性が高いです。目に見える血尿がなくても、結石を疑ったら病院でも検査をします。しびれがある場合は、椎間板ヘルニアが悪化している可能性もあるので、まずは病院で医師の診察を受けてください。

 ――治療の基本

 井上 飲み薬や注射、点滴などで積極的に痛みを取ったうえでストレッチを始めとした運動療法をすることが大切です。その中の一つとして一番最初に行うのが、最初にお話ししたもも裏の筋肉のストレッチ。ポピュラーなものですとジャックナイフストレッチ(イラスト参照)ですね。また、大きな動作をするときに腰の骨がきゅっと縮こまり一つのユニットになって動く反射があるのですが、その反射に大事なのが、背骨周りについている多裂筋と腹部全体を覆う腹横筋と言われています。体の正しい使い方を再獲得するという意味で、インナーマッスルでもある両筋肉も鍛えたいところ。独特の方法があるので専門医などに相談することをお勧めします。

 ――自分で痛みを和らげる方法はありますか

 井上 急性腰痛症の場合は痛み止めを飲んだ方が良いです。市販のロキソニンでもいいですし、カロナールでもいいですので、痛み止めを早いうちに服用することが大切。慢性的に痛みが続く慢性疼痛の場合は、内服治療と並行して運動療法が適しています。慢性疼痛に効く飲み薬もあるので、必要な場合は病院で処方してもらうことができます。

 ――寝具などには気を使った方が良いのでしょうか

 井上 最近は、新型コロナウイルスに感染して自宅療養された方が腰の痛みを訴えて病院に来ることが多くなりました。2週間ほど寝込んでいたことで体力が落ちて腰が痛くなったり、ヘルニアを発症する方がいます。病気のときに限らず、寝床は日々の体調に影響する場所でもあるので自分に合ったマットレスなどを使うことをお勧めします。

【ジャックナイフストレッチ】肩幅程度に足を開いてしゃがみ、両手で両足首をしっかりと握る。胸と太もも前面をくっつけ、胸と太ももが離れないようにヒザを徐々に伸ばしていく。限界まで伸ばしたらそのポジションで10秒間キープ。

 ☆いのうえ・るみこ 松浦整形外科内科院長。日本整形外科学会認定医、スポーツ医、リウマチ医、運動器リハビリテーション認定医。日本スポーツ協会公認ドクター。