「もう待てないよ!」。このワンフレーズを、ありったけの気持ちを込めて歌う2人がいる。9人組ガールズグループ、NiziUのRIO(19)MAYUKA(18)だ。

NiziUは“いい虹の日”にあたる24日、ファンへの感謝の思いを込めた、初のアルバム「U」を発売した。冒頭の歌詞は、初のファンソング「Need U」のサビの1部だ。どこにでもいるような普通の女の子だった9人が「NiziU」としてデビューし、コロナ禍で、見えない存在の「WithU」(ファン)という存在が「実在するものなのか?」と、不安に感じながらも、WithUの温かさに支えられ、勇気づけられながら、まもなく1周年を迎える。そんなファンとの絆を歌詞に詰め込んだ。

RIO、MAYUKAに共通するのは、サバサバしている部分もあるが、時々涙をこぼすほどファン思いな一面がある事だ。RIOはインタビュー時、ほとんどの発言にファンへの感謝、思いを口にしていた。アルバムができた心境を聞いた最初の質問から「どんなジャンルのものがファンの方好きかな? とか、そういうのを考える時間もすごく楽しかったです」と答えた。

同グループは、韓国の芸能事務所「JYP」に所属している。そのため、いわゆる、新曲発売時の“活動期間”を日本で活動。それ以外は、“準備期間”として、韓国でレッスンに励む。韓国滞在時には、自然とメディア露出がなくなるため、日本国内では「NiziUを見なくなった」と考える人も多い。それをRIOも「すごいWithUの方々には『NiziU今どこにいるんだろう』『何しているんだろう』って思わせてしまったと思います」と、実感しているようだった。

だからといって、下を向いているわけではない。韓国からの生配信や、ライブで当選したファンと、一緒にステージで踊ること…次々に「ファンと思いを共有したい」と、やりたいことが出てきた。RIOは過去に、ダンサーとしてライブステージに立った経験を持つ。そのときに見た光景、自分の肌で感じたファンの大切さ-。それらを分かっているからこそ、ファンに対しての感謝や思いが強いのかもしれない。

一方のMAYUKAは、ラップのスキル、ダンス、関西出身のツッコミ-。この1年で大きく変化し続けたメンバーだ。インタビューでは、パフォーマンスで見せるイケイケなMAYUKAとは違い、素直で心優しく、ファン思いなMAYUKAが前にいた。その姿は1年前と全く変わっていなかった。最初のアルバム完成の思いから「プレッシャーというか、なんか本当にうまくやらないとなーっていう気持ちにもなったりとかして…」と、心の内を明かした。

MAYUKAは、どちらかといえばネガティブな性格だ。自分の持っているポテンシャルや実力に気付かず、信じられていないような部分もあるのかもしれない。だが、そのありのままの姿を、そして努力を続け進化しつづけている“カメレオン”の姿を、ファンは唯一無二の魅力と感じているだろう。

心の底からファンを思う姿勢も、変わっていなかった。今後目指したいライブステージを聞かれ、他のメンバーがドームと堂々と答える中、MAYUKAは「ドームとかもすごく本当に夢の夢なんですけど、逆に私は本当に47都道府県まわりたいくらいの、本当に野外のちいさいステージでも良いので、そのそれぞれの地方だったりとかに行けたら」。

この回答は、実は1年前のデビュー時とほとんど変わっていない。1年前は「目指すはドームですけど、近いところでもやってみたいです。ドームだと、広くてファンの方と遠くなっちゃうのが嫌だなって、ちょっと複雑な気持ちもあります」。これを覚えていた筆者は、MAYUKAの回答になぜか笑みがこぼれてしまった。

MAYUKAには、ある意味“もっている”と感じる部分が多い。初出場だった昨年の紅白では、マイクトラブルにより、イントロで不在となった。本人にその思いを聞くと「正直言うとちょっと悔しい部分もあったので…」と答えたが、ピンチはチャンスといわんばかりのパフォーマンスを見せてくれた。

30日に公開された「『Beyond the Rainbow-虹の向こうへ-』1st Anniversary Special ver.」では、パフォーマンス中、アクセサリーがセンターに落ちてしまった。しかし、トラブルにはもう慣れたのか、約34秒後にはサラッと回収。トラブルに関して「動じない心の強さが欲しい」と話していたが、すでに持ち合わせている。逆に、自分の実力をあまり理解できていない、MAYUKAの今後の成長に怖ささえ感じる。

RIOは「Nizi Project」の審査で、J.Y.Park氏から「ダンサーみたい」と、厳しい評価をされたこともあった。Park氏は、うまく見せようとする自分中心の考えでなく、見てくれている人へ思いを伝える「歌手」になるべきとアドバイスを送った。

同プロジェクトでシンデレラガールとなったMAYUKAは、自信のない表情のまま広いステージでパフォーマンスし「このステージになじんでいない。別々」と厳しい評価を受けた。そして「大きなステージに立つときは、自分が最高のスターだと思うべき」とアドバイスを送られた。

コロナ禍で、ファンと会えない時間が1年以上続いた。その間の思い、全てが詰まった7文字。「もう待てないよ」。偶然にも、初の有観客ライブの舞台上で涙を流した2人が歌唱している。12月2日には、デビュー1周年を迎える。単独ライブの広いステージで“歌手”である2人を早く見たい。【佐藤勝亮】